『ねぇ、オレが今、美麗ちゃんを
このままどっかに連れてったらどうする??』

『連れてきませんよ。だって私、帰るから』

フフフフ…

ウェイターは鼻で笑った。

『そっかぁ。
なんかあんま動じないんだね。
キャーみたいな??』

『そんなアニメみたいなセリフ

私は言いませんっ!!』


ガチャ

『合格だね!!美麗ちゃん。
カギ開けたよ。帰りな』

『え??何が?…』

『ナンバーワンになる素質ありだね。
働いてくれないかな~ホントに。
よく枕営業ってゆ~じゃん。お水で。
あ~ゆ~のマジであるけど、大体、
ホストでもお水でも
売れない子がやるんだよね。
で、客や周りの店員にバレて結局、
客にも切られるし店にも居ずらくなる。
その程度の人間性なんだよ』

『あぁ…わかる気が…』

『美麗ちゃんみたいに
凛とした子を客は求めてんだよね』

里桜は黙って聞いていた。

『だから社長さんが初めて
ラストまで居たんだよ。
仕事で疲れてるのにキャーキャー煩いと

もっと疲れんだろ?相手に合わせてくれて癒してくれる子。求めてんだよな。ホントは男って。特に社長クラス』


『なるほど~』

『怒ってても相槌くれんだ。ふふふ』

ウェイターは優しい目で里桜を見つめた。

『まぁ…そんな感じです』

アハハハ…


彼は車から下り後部座席のドアを開けた。

突然、里桜をお姫様抱っこ。

『え??…』

降ろした瞬間、両手を
車の窓ガラスに押し付け…
キスをしようとした。

『ごめんなさい!!彼氏居るから!』

両手で相手の口を押さえた。


『息できないよ~
コレこそ、アニメみたいじゃない??
美麗ちゃんの行動。昭和のアニメ』

『もぉ~からかわないでください!!』

『あ、また怒った。
オレ、キスすると思った??』

『はい』

『自信過剰だな~』

ウェイターは微笑んでいた。

『はぁ??なにそれ!!』

『嘘だよ。キスしようとした…
キスしようと思った。

いや…違うなぁ~

キスしたくなったが正解かな??

帰んな。部屋の電気点くまで見てるから。
夜はエレベーターとかも危ないからな』

『はい。ありがとうございました。
おやすみなさい』

里桜はエレベーターに乗り部屋に入る。
電気を点け出窓から下を眺めると
手を振るウェイターが居た。

なんかホントは優しいんだ。

イイ人かもしれないな…

テールランプを見つめながら思った。