交通事故を起こした当事者は、事故の状況を正直に証言しないことが多い。自分に不利になることは隠して虚偽の証言をする。
だから双方の主張が真っ向から対立することだって珍しくない。
「交通事故鑑定士」という職業がある。鑑定人と呼ぶ場合もある。
どんなことをするかというと、事故のあとで車の傷などを科学的に分析して、その事故がどのように起こったかを推察する仕事である。
ところで、交通事故鑑定士に依頼することを考えている人がいるのであれば、「チョット待て!」と言いたい。
とりわけ、「中立公正な立場で鑑定をしてほしい」と期待して依頼するのであれば、中立公正は期待できないと、もう一度立ち止まってみることを勧めたい。
交通事故鑑定人は誰でもなれる。資格があるわけでないので、自分で鑑定士を名乗れば通用する。
交通事故の鑑定を行う人は、たいがい株式会社の形態をとっている。平たく言えば営利の民間会社ということである。
交通事故鑑定士が集まってグループで「交通事故○○教会」とかを形成していることが多い。
「○○鑑定センター」、「○○鑑定研究所」とかの名称もある。
それらの団体の中には交通事故部門に限らず、機械部門・船舶部門・電気電子部門…など様々な部門の鑑定を行っているところも少なくない。
中には、公益社団法人の肩書をかぶせて、ほかとの違いを目立たせているところもある。
しかし実質は個人企業である。
団体なり教会なりが責任を持つのではなく、単に仕事の窓口になって登録メンバーの鑑定士に仕事を割り振っているだけである。
契約は個々の鑑定士と依頼主(または代理の弁護士)との間で交わされる。
団体や教会は契約に関知しない。鑑定結果についても一切かかわりを持たない。
たちの悪い鑑定士に当たると、意図的に捻じ曲げられる恐れさえ出る。
鑑定士の本来の作業は、証拠や事実を積み上げて、そこから科学的に分析して結論を導くことである。
ところが、はじめから落としどころの結論を決めていて、都合よい事実だけ拾い集めて結論を出す鑑定士がいることを知っておく必要がある。都合悪い事実は無視して取り上げないことは言うまでもない。
技術士という難関の国家資格を所有して事故鑑定士を仕事にしている人もいる。
技術士の資格を持っているから、公正公平かというとそうでもない。
技術士としての科学的根拠や知見に基づいて評価をした結果である、と開き直る。
車関係の仕事をする人であれば常識とされることさえも、肩書で打ち消そうとする。
このような鑑定士は立場が悪くなると、「どちらにも加担しない中立の立場で鑑定した結果である」と公正公平を隠れ蓑に使う。
欠陥だらけの独善的な分析評価の言い逃れに「公正公平」が使われる。
彼らにとっては、使い勝手の良い便利な錦の御旗となる。
「中立公正」を強調していても“宣伝文句を額面通りに信用できないぞ!” と割り引いて考えたらいい。
むろん、真に中立・公正・公平な鑑定士がいることを否定するものでないが、期待が大きいと落胆も大きくなるので、心しておきたい。