同朋新聞&行円寺通信2024年08月号 | 行円寺公式ブログ「その名も、行円寺(ぎょうえんじ)」

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同朋新聞&行円寺通信2024年08月号出来ました。よろしくお願いします。

 

《同朋新聞2024年08月号》

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《行円寺通信2024年08月号》

 

薬物依存問題について
                   住職 釋慈明

 先だって、ジェニファー・M・ソール著「言葉はいかに人を欺くか~嘘、ミスリード、犬笛を読み解く」(小野純一訳、慶應義塾大学出版株式会社刊)を読みました。

 

 この本では「嘘をつかずに、相手側にそう思わせる・判断をさせるテクニックがいかに多くの場面で用いられているか」を解説したものです。これは非常に興味深い内容でした。

 私たちが日常触れる言葉において「~と言われている」、「~の可能性がある」などの表現があります。これは本来「誰が言っているのか」、「その判断は正しいのか」、「あるといわれるその可能性はどれくらいなのか」と確認すべき内容であるのに、そのように言われると何故か「一般的にはそうなのだろうなあ」と受け入れてしまいやすいなど私たちの習性が紹介されていました。

 

 この本を読んだ時、先日自分が寺田しずか参議院議員としたやりとりを思い出しました。寺田議員の活動報告の後質疑応答の時間があり、私は先般成立した大麻使用罪法案に賛成した理由を尋ねました。寺田議員は「大麻にこれまで言われていた強い依存性や毒性も無く、てんかん治療やその他様々な医療的価値がある事は認識しているが、大麻の使用が他の強い薬物使用への入り口となる(※これを専門用語でゲートウェイ理論といいます)という事があり、その点において使用罪制定に賛成した」との事でした。その時私は、「アメリカNIDA(米国国立薬物乱用研究所)の調査では「大麻使用者の大部分はその後他の強い薬物へ移行しなかった」と公式ホームページに発表されているのを知らないのかな」程度に思っていましたが、大麻使用罪制定に向け8回にわたり開催された厚生労働省主催の「大麻等の薬物の在り方検討会」ではこのゲートウェイ理論が繰り返し主張されていました。NIDA(米国国立薬物乱用研究所)の調査報告と違う点に疑問を持った私は厚労省に問い合わせたところ、こう返答されました。
「我々は大麻はゲートウェイドラッグであると《いわれている》と言っていて、大麻はゲートウェイドラッグで《ある》とは言っていない。他の強い薬物に《移行する可能性がある》言ってはいるが、《移行する》とも言ってはいない。誰がそういっているかは知らないが「そう言われている」という事実を紹介しているのであり、また大麻使用により生ずる様々な障害の可能性は「0」ではない限り「ある」と表現しても嘘ではない」と。確かに「全くの嘘」ではありませんが、そのような表現方法で聴衆や読者を会おう方向に誘導しようと知る意図が伺えます。

 

 使用罪制定を目指した厚労省の説明会ではこのような表現が多用されましたが、厚労省に言わせれば「厚労省が議員をリードしたのではなく、議員方がそう判断しただけ」という事でしょう。民間企業が言葉を巧みに使い、消費者の購買意欲をあおるのは知っていましたが、厚労省や警察など公的機関も「嘘をつかずに、相手側にそう思わせる・判断をさせるテクニック」を使っている事に気づき驚いた次第です(そのほかにも大麻を合法化した国や州では交通事故が増えた、精神病患者で大麻を吸っていた者が多い、などの様々が報告がありましたが、よくよく読んでみますとそれが因果関係なのか相関関係なのか、偶然なのか、誤差の範囲なのかには一切触れていませんでした)。

 

 薬物問題は、現在海外先進国においては、様々な研究結果から薬物「使用障害問題」とされています。これは「心的疾患やトラウマなど何らかの問題を抱えた人が自己治療の一環として薬物に手を出し逆に体に害をもたらしてしまう、治療の必要な人権問題」と、薬物使用者を被害者と捉えらえその救済を目指すものです。それに対し日本では「興味本位に手を出し、止められなくなった愚か者であり、罰を与えるべき存在」として捉え、一度でも手を出した人間は犯罪者として社会から見放されてしまいます。実は日本でも今から20年前、2004年8月27日に京都弁護士会が法務省や保護観察所長に対し「刑罰から治療へ」と提言したのですが、事態は一向に進んでいません。

 

 自分には薬物問題は関係ないと思われるかもしれませんが、過度なストレスを長く受けた時など薬やアルコールに頼り、その結果依存症になる事があるかもしれません。薬物依存問題は他人事ではありません。その問題とどう向き合うかが問われていると思います。

 

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