少年は偶発的に一日を九回反復するという特異な体質だった。
反復現象に陥る一日は不確定だが一ヶ月に何回か起こることもあり、
0時を始まりにして一日が終われば0時に戻り同じ一日を繰り返し、
それを九回行い、九回目の最後の一日が誰にとってもの本当の一日となる。
そして同じ一日の繰り返しを認識しているのは少年だけであり、
他の誰もは最初の一日、オリジナルの一日をなぞるように行動する。
そんな体質のせいで精神年齢のみ発達してやや老成している少年は、
新年の始まりを祖父の家で過ごしていた。
正月に祖父の家に集まった面々の多くは祖父の後継者となること、
莫大な遺産を手にすることを狙っている。
そうして始まった一日だったが、少年は祖父に連れられてしこたまに酒を飲まされ、
ぐだぐだに酔っ払って盛大に吐いて、あっという間に終わってしまう。
そのはずだった一日が、反復現象に陥って繰り返された。
デジャブのような一日の始まりから反復現象を悟った少年は、
とりあえず吐き気の苦痛を避けようとして祖父との顔合わせを回避する。
だが、ただそれだけの行動がもたらしたのは祖父の死だった。
家族の一人が祖父を花瓶で殴って殺したと思しき場面に出くわし、
三周目ではその人物を連れ出して犯行を未然に防ごうとするも、
三周目、四周目と次々に新たな人物が犯人となり、どうしても祖父は殺されてしまう。
一体、どのような因果が祖父の死を招いているのか。
祖父の死を回避するには、どうすれば良いのか。
少年は繰り返す一日の中で情報を集め、何とか祖父の死を防ごうとするが……
っていう、回数制限有りのループで最善の一日を求めてあがく話。
何で九回? どうして一日を繰り返すの? っていうのは体質だから、
そういう決まり事なのだからと物語が進んでいくのがすごい。
そして特異な現象や殺人事件は、語り部である少年の成せる技なのか、
簡潔な説明や素直な感情の吐露などが軽快で非常に読みやすかった。
問題点である祖父の死についても、どうして起こったのか、
何でループする毎に犯人は異なるのに凶器となる物は同じになってしまうのか等々、
ラストで論理的に解明されていく流れが爽快だった。
しかも、そこからのびっくりさせたれ精神があるのだから、この一冊の評価の高さに納得。
語り部の文章は読みやすいし全体的に軽い空気感だし驚きの展開もあるし、
最初の一冊にも適しているように思えた。