シェルターのようなそこに二人以上で入ってしまえば、
強制的に人格が入れ替わってしまう。

人格の入れ替わりはスライドするように移り変わり、
順繰りが一周すれば再び自分の体に戻ってくることができる。

ただし一度人格転移を経験してしまえば以降逃れる術はなく、
どれだけ離れていようと人格転移のスライドは繰り返し起こり、それは死ぬまで続く。

地震の発生によって逃げ込んだ先がそのシェルターで、
語り部の青年は同じく駆け込んだ人たちとの間で人格転移を経験する。

ほとんど見ず知らずの誰か、その誰かの体に精神が入り込むという異常な現象。

地震から救出されるも政府の管理下に置かれることとなった彼らは、
今後の生活について話し合う時間を与えられるが、
話し合いに使われるはずの時間で行われたのは殺人だった。

人格が転移する中で行われる何者かによる殺人、
果たして誰の精神が何の目的で器となる肉体を殺しているのか?

およそ無差別としか思えない殺人に秘められた目的とは……

っていう、特殊な設定を構築した中で起こる殺人の謎って話。

相変わらず? 人格転移にマスカレードといった特別なワードを与えて、
特殊な世界観がさも卑近なものであるように感じられる。

そして人格転移が発生し、いざ殺人事件が起こると展開の目まぐるしさにくらくらした。

 

誰がどの体に入っているのかを把握するだけでも大変なのに、

人格転移が次々に起こることで余計にややこしさが募って誰が誰なのやら状態。

 

で、最後にはやっぱりびっくり展開が用意されているものの、

割と冒頭で考えたことではあったので、ちと肩透かしだった。

 

まあ、図まで準備されて誰の精神が誰の肉体にスライドしていくかを示されると、

そりゃ犯人は……とメタ的な思考で想像してしまうものだろう。

 

ハッピーエンドっぽい終わり方だったけど、犯人にしてみれば不幸というより他ない。