失業中の男は偶然に出会った男から不可思議な仕事を依頼される。
法外な報酬を得られる仕事の内容は、一か月の間、
別の人間として別荘での生活をするというものだった。
金銭面から引き受けた男は目隠しをされた状態で別荘に到着し、
そこで見知らぬ女を妻、見知らぬ娘を子供と設定した生活が始まる。
女も子供も男と同様に仕事として疑似家族の仕事を引き受けており、
それぞれが役割として別人を演じている。
別荘には三人の他に人はなく、別荘から出ることは許されない。
そして別荘内の至る所には監視カメラや盗聴器が仕掛けられており、
三人は監視する何者かに正体がばれぬよう、常に別人を演じなければならない。
見知らぬ妻と娘に戸惑いながらも良き夫を演じる男は、
別荘で過ごすうちに不可思議な現象と遭遇することになる。
妻役の女とはテレパシーのように意思の伝達ができるようになり、
束の間の一瞬、未来とも思しき光景を垣間見ることさえできた。
この別荘では何が起こっているのか?
別荘内を監視しているとされる何者かの目的とは?
男は段々と妻役の女、娘役の子供と交流を深めていくが、
同時に不可思議な現象は段々と頻回になっていき……
っていう、別荘で起こる超常現象的な出来事の真実とは、って話。
早い段階からテレパシーといった不可思議現象が起こり始めるものの、
いやはや何なんだろう、想像もつかないわと偽装家族の交流に重きが置かれて進む。
いくら見知らぬ人であっても妻なんだから一緒に寝ないとまずいだろうとか、
我が子の設定なんだから食の好みを知らないのはおかしいよなとか、
あれこれ考えながら二人と距離を縮めていく男を見守る感じ。
で、一区切りごとにちょっとした謎解きめいた小話が挟まれるものの、
およそ本編とは関係ないので、なるほどなー、という感慨が残るくらい。
もとが雑誌掲載の体裁上、一話毎にそういった起伏が用意されたっぽい。
終盤となりいよいよ超常現象的な説明が行われるけど、
第三者が訥々とねたばらしのように開陳するだけなので爽快感は乏しかった。
その後のエピローグ的な話でタイトルが回収されて、
じんわりと温かく余韻が広がる。
読後感はとてもいいけど、物語的には起伏に乏しく読み進めるのに時間が掛かった。