三編で構成されている短編集、

過去の二冊と同じく最後の一編が書き下ろしになっている。

 

畏れ入谷の彼女の柘榴

妻が妊娠するも、最後の性行為はずっと前のことだった。

 

妻の不貞を疑うも彼女は覚えなどないと憤慨し、

ではお腹の命はどこから来たのかという答えは一人息子からもたらされる。

 

まだ小さな息子は指先の光を入れることで相手を妊娠させられた。

 

近場の公園のほとんどは息子の行為によって子猫が溢れており、

周囲では望んだものなのかも訝しいおめでたが頻発している。

 

そして妻を妊娠させたのもまた、息子だった。

 

不可解な現象に戸惑いながらも命と向き合う語り部は……

 

っていう、愛していた人をひたすらに断罪する話。

 

不惑やら迷いやらを経て正しさを貫こうとする語り部は達観しているようにも見えるけど、

その相手が妻や子供というのが物悲しく思えた。

 

最後の慟哭めいた希望もやるせない。

 

裏山の凄い猿

同級生から結婚できないと言われた語り部は、

自分自身を見つめ直して自問自答を繰り返す。

 

その末に優しさを磨こうと思い立ち、行方不明になった男性の捜索を始める。

 

裏山の凄い猿は言葉を喋って捜索隊に協力している。

そんな中で語り部は一人、自己や他者について考えながら捜索を進める。

 

そして辿り着いたのは異質な空間で、そこには悪さをする蟹がいた。

 

寓意に満ちた展開の先にあるものは……

 

っていう、自分ってのはそんな風に思われてるの? と悶々とする話。

 

喋る猿に悪さをする蟹という猿蟹合戦的な寓話を絡めつつ、

何でいきなり結婚できないとか言われちゃうの?

 

と、もやもやと悩みながら自分なりの選択を貫く感じ。

 

ともすると鬱陶しい自己憐憫かな? モラトリアムかな? とも思えるけど、

軽い調子で進んでいくので、あっという間に読み終えた。

 

うちの玄関に座るため息

我が家の玄関には人の心残りが人の形をして訪ねてくる。

 

心残りの話を聞くのはもっぱら祖母の仕事みたいなもので、

どのようなことが話されているのかは分からない。

 

そんな家で育った三人兄弟は自分たちを普通だと考えていたが、

兄が恋人である男性を紹介したことから綻びが浮かび始める。

 

兄の恋人は男性、姉も語り部も容易にそれを受け入れ、

兄も特段に構えた様子もなく紹介する。

 

そこにある問題に気付いたのは、兄の恋人だった。

 

恋人は兄に別れを告げて立ち去り、

残された三人はどこに問題があったのか、何が問題だったのかを突き詰めていく。

 

心残りをしない生き方は普通ではないのか……

 

っていう、固定観念に囚われた人物達が正しさとは何かを探る話。

 

一見すると普通というか、むしろ好意的な人物のように思えた三人が、

綻びによって際どい人物のように思えてくる流れが良い。

 

これまたほとんどが会話劇だけど一番読み応えがあったかな。

 

割と新しめ? の短篇二つに書き下ろしと、久し振りに舞城節を楽しめた。