四編で構成された連作短編集。

 

間宵の父

小学生の女の子、その友達のお父さんは皆の人気者だった。

 

アイドルのように綺麗な顔をしていて、お菓子作りが上手で、

お話をすれば現実にように感じることが出来るほどだった。

 

友達のお父さんのお話はクラスメイトの間で広まっていく。

 

女の子もお話を聞きたいとねだり続け、ついにその機会を得る。

始まったのは、楽しいハロウィンの話。

 

友達のお父さんがお話をすれば、ハロウィンの登場人物が目の前に現れて、

女の子を幻想的な世界へと導いていく。

 

けれどお話の世界は楽しいものから残虐なものへと変化していき、

悪夢のようなお話から目が覚めた後、お母さんが姿を消した。

 

それからというもの、女の子の人生は転落していくばかりで……

 

間宵の母

大学生の男は同じ大学のお嬢様に心を寄せていた。

 

美しく、けれど奔放で、気さくに男友達と触れ合うお嬢様。

自分は体よく使われているだけなのでは、そう思いながらもお嬢様には逆らえない。

 

そしてお嬢様には目の上の瘤とも呼ぶべき、忌まわしい存在がいた。

 

彼女は地味で、誰とも喋らず、どれだけ嫌がらせを仕掛けようと反応を示さず、

たった一人で大学生活を送っていた。

 

彼女をどうにかして凹ませることが出来れば、お嬢様の気を引けるのでは?

 

邪な思いから彼女の後をつけ、身の回りを調べたところ驚くべき事実に直面する。

 

彼女の母は若い男を金で婿に迎え、しかし婿は他の家の女と姿を消していた。

そのせいで彼女の母は狂い、常軌を逸するような行動を常としていた。

 

そんな母と生活する彼女に同情しながらも、男の計画は揺るがない。

 

男はお嬢様を振り向かせる為、彼女をどうにかしようと目論むも……

 

間宵の娘

緩い会社に勤める女はベテランの退職と共に入ってきた新人に興味を向ける。

 

まるで化粧気のない彼女は黙々と仕事をするのみでお喋りの相手にもならなかったが、

けれど彼女には驚くべき母がいた。

 

会社の窓を常識破れの力で叩き、彼女の為に弁当を持ってくる母。

 

事ある毎に会社へと訪ねてくる母、しかし毎度その姿を見ることは出来ない。

そしてある日のこと、窓が割れて彼女は傷を負った。

 

それでも彼女の母は姿を見せず、謝罪するのは彼女ばかり。

 

これは何かがおかしいのではないか?

彼女の罪悪感は、本来は彼女の母が持つべきものではないか?

 

気に掛けた女は彼女の住まいを調べて境遇を把握するも、

そこに新たな疑問が生まれる。

 

彼女には子がいて、彼女の母という人物は既に死んでいた。

 

では彼女に弁当を届けに来ている母とは誰なのか?

女は彼女に疑問をぶつけ、そこから子供絡みの付き合いが始まるも……

 

間宵の宿り

少年は父母に対して強い憎しみを抱いていた。

 

自身を捨てた父、自身を虐待した母、そして憎しみは拡大していく。

母も親から虐待されていた。

 

母の母は皆から人気のあった、とある男と失踪した女であり、

その男の妻から泥棒猫と誹謗中傷を受けるあまり狂った父から虐待されていた。

 

自身の境遇は、連鎖した果てにあるもの。

 

復讐すべき相手は誰なのか。

母の自殺により対象を模索する少年は、偶然に自身を捨てた父を発見する。

 

しかし父に復讐を果たした途端、そこにあったのは目覚めだった。

 

父への復讐が幻であったことを知った少年は、けれど新たな事実に気付き……

 

っていう、三編の出来事が最後の一編で収束していくって話。

 

主に間宵という家庭に焦点が当てられているものの、

最初の一編はほとんど意味が分からない、あえて意図不明な話になっている。

 

次いで話が続くうちに、あれ、これらの話ってのは関連性があるのか? と疑問に思う。

 

何しろ本の帯にホラー・ミステリーと謳われているので、

理不尽系の不可思議な話が盛り込まれているのかしら、と。

 

その疑問を最後の一編で一気に回収するのは気持ち良かったけど、

いかんせん他の三編が単独の話だと収束もまばらで面白味に欠けたかな。

 

作中に何度か登場する急激な場面転換、

幻想体験めいた描写に対する白々とした事実は割と好き。

 

そうそう、ミステリってのはこういうのも許されるんだよなーみたいな。

 

章毎に語り部が違うのでいまいち意識もそぞろってな心地だったけど、

最後の章で不意に真相が解き明かされて繋がっていく様は楽しかった。