以下の六編で構成された短編集で、葉村晶シリーズ。

 

青い影 七月

静かな炎天 八月

熱海ブライトン・ロック 九月

副島さんは言っている 十月

血の凶作 十一月

聖夜プラス1 十二月

 

青い影 七月

目の前で起こった交通事故、パニックになる群衆の中、

一人の女が滑るように現場から消えた。

 

事故の目撃者として警察に名乗り出た葉村晶だったが、

事故に巻き込まれた一台の車から鞄が消えたことを知らされる。

 

車に乗っていた人物は死んでおり、けれど持っているはずの鞄が消えていた。

 

記憶を探り、車から鞄を持ち出していた人物を思い出した葉村は、

乗り掛かった舟と調査を開始する。

 

現場から消えた女の行方を探り、辿り着いた真相とは……

 

っていう、地道な調査が実を結ぶ話。

 

相変わらず胸が悪くなるような人物が登場するけど、

それを追うのが葉村晶って流れは面白い。

 

葉村の調査も徒労になるかと思いきや、最後に実を結ぶってのも読後感が良かった。

 

静かな炎天 八月

ある男の素行調査を依頼された葉村だったが、

調査はほんの僅かな時間で達成されてしまう。

 

間を置かずに次の依頼が来て、更に次の依頼が来て、

遂に幸福期へと入ったのかと思われたが……

 

っていう、周囲の人からちょっとした頼まれ事のような依頼をこなしていく話。

 

もちろん密やかな意図が仕込まれており、すかさず指摘する葉村が鮮やかだった。

 

熱海ブライトン・ロック 九月

三十五年も前に、一人の年若い小説家が姿を消した。

初めての熱海で、ふらりと散歩するようにして消えた男。

 

書店のイベントと絡んで男の調査をすることになった葉村は、

発見された日記の断片から男の過去を追う。

 

何故、男は消えたのか……

 

っていう、色んな人物の証言から一つの真実を導き出す話。

 

際立つほど嫌な人物ばかりが登場して葉村の不幸っぷりが示されていたかな。

 

副島さんは言っている 十月

過去の同僚から一人の女を調べてくれと連絡が入る。

けれど相手はどうにも切羽詰まっているようで、要求も素っ気ない。

 

相手の態度に不満を抱いて後回しにしようとするも、そこにニュースが流れる。

 

ある人物が病院で人質を取って立てこもっている。

その時、ちらりと映像に写り込んだのは、かつての同僚の顔だった……

 

っていう、かつての同僚のトラブルを解決するって話。

 

安楽椅子探偵めいたというか、ひたすらネットを駆使して調査する葉村も面白いが、

そこからのオチがシュールなギャグのようで笑いを誘った。

 

出来すぎではあるけど、こういう展開も面白い。

 

血の凶作 十一月

とあるハードボイルド作家が、自分は死んだと告白する。

 

火災によって死んだ人物は作家の戸籍を使っていて、

戸籍上であれば、確かに作家は死んでいた。

 

誰かが自身の戸籍を使っていた。

 

その謎を調査することになった葉村は関係者を訪ねるが……

 

っていう、やたらとコミカルな話。

 

関係者を訪ねるうちに一つずつ謎が解き明かされつつも、

また新たに謎が浮き上がり、ひたすら突き詰めるって感じ。

 

葉村がまるで雑用係ってな具合に使われている。

 

聖夜プラス1 十二月

書店のイベントにて重要な一冊を引き取りに行く。

 

ただそれだけの仕事だったはずが、行く先々で新たな頼まれ事に見舞われて、

体調を崩しながらも懸命に仕事に取り組む。

 

そこに奇妙な窃盗犯が絡んできて……

 

っていう、ひたすらに葉村がこき使われる話。

 

あれやこれやと頼まれ事をして断り切れない姿と、

そのせいで順調に体を崩していく四十を迎えた姿が印象的だった。

 

まあ、ちょいとお人好しが過ぎるというか、そこまでしなくてもと思わなくもないけど。

 

それにしても葉村晶が四十肩でひいひい言っているのが何とも驚いた。

 

ちなみに年明けからハムラアキラと何故か片仮名のタイトルでドラマ化するらしい。

ミステリのドラマで長編は難しいだろうし、今作の短篇から映像化されるものもあるのかな。

 

葉村晶役がやたらとしゅっとした美人でちと印象とは異なるけど、たぶん観るかな。