カラス、なぜ鳴く

ある時期を境に暗く沈んでいた息子が活気を取り戻した。

妻と息子は明るく会話を交わし、その原因を解き明かす。

 

存在しないものとして扱われるいじめにより引きこもっていた息子は、

ある人物の死によって明るさを取り戻した。

 

男は二人の話を聞くうちに一つの疑念を抱くが……

 

たつまさんがころした

彼女は聞き間違えに運命を感じていた。

 

進学先、結婚、迷った時には何かしらの聞き間違えが起こり、

その聞き間違えに従えば良い方向に進めた。

 

そして結婚を控える中で、聞き間違える。

 

子供たちの言葉、だるまさんがころんだ。

たつまさんがころした。

 

結婚相手の名前、彼と同じ会社の女性が殺された事件、

聞き間違えが引き起こす結果は……

 

シクラメンの家

その家のシクラメンは日によって色が違った。

 

娘の何気ない指摘は、その家の夫が殺されたことで推理へと発展する。

シクラメンの色は逢引の暗号で、会う日を示し合わせていたのではないか。

 

彼女は娘の言葉を受けて推理を補完するが……

 

子供時代の小さないたずら、

かくれんぼをしながら彼女を取り残した。

 

失せかけた記憶が友人の死によって蘇る。

 

友人は、かつて取り残した彼女の姿を見たと告げて死んだ。

そして次々と、かくれんぼを共にした友人たちが死んでいく。

 

皆が皆、かつての彼女の姿を見たと告げて……

 

黒髪

彼女は作家の夫に尽くしながら日々を過ごしていた。

 

夫は過去に結婚していたが、その時の妻は病の末に亡くなっていた。

献身的に夫に尽くす良き妻で、彼女も顔見知りだった。

 

その妻に、夫を託された。

子供は作らないでほしい、という言葉を受けて。

 

しかし妊娠していることが分かり、同時に家の中で奇妙な黒いものを見始める。

 

鼠か蛇を思わせる黒い影は、執拗に彼女の視界をよぎり……

 

悪夢

臨床心理士として働く彼女のもとに友人の妻が訪れる。

妻は繰り返し見る悪夢に悩まされていた。

 

妊娠し、出産を控える中で、産むべきかどうかを悩む。

原因は子供の首を絞めて殺す夢にあった。

 

夢は現実になるのではないか。

 

彼女はカウンセリングから妻の心理を読み解くが……

 

メイ先生の薔薇

店を訪れた男は三十九本の黄色い薔薇を持っており、

その薔薇を満足げに眺めながら一人、酒を飲んでいた。

 

やがて男がメイ先生の話を始める。

 

小学生の頃の担任で、三十九人の生徒全員を愛してくれた素晴らしい先生。

 

生徒全員がメイ先生を愛していて、先生が結婚で辞めることになった時も、

全員一致で祝福のパーティーを開いた。

 

全てはメイ先生の為に……

 

セイレーン

男は彼女との旅行中に喧嘩をして車から叩き出される。

 

途方に暮れていたところに現れた一台の車には、

男が二人、女が三人乗っていた。

 

何かの縁と彼らと行動を共にしてペンションに辿り着き、

そこで始めた彼らのゲームに参加する。

 

意中の相手を紙に書き、合致すればカップルになるという単純な遊び。

 

男は一人の女性に心を惹かれて紙に名前を書くが……

 

蒸発

家族と喧嘩した一人息子は、全員消えてしまえと願い、

次の日には家族の誰もが姿を消していた。

 

父に母に、寝たきりに近い祖父。

 

家族はどこに消えてしまったのか?

その謎も、彼が消えてしまえと願うだけで解けた。

 

彼が望めば何でも消えてしまう。

 

彼は思うがままに邪魔なものを消すが……

 

湖畔の家

男は思い出の残る家に戻り、不思議なものを目にする。

 

庭で遊ぶ小さな子供二人、子供は家の中にも現れる。

そして子供は見えるだけで、触れることも聞くこともできなかった。

 

子供は過去の自分の姿。

 

その姿から記憶をたどり、封印された物置の真実が明らかになり……

 

っていう薄暗くて奇妙な一冊。

 

ミステリ的な要素の全くない、奇妙な現象やらが絡んだ話もあり、

どれもがどこか薄気味悪くて楽しめた。

 

個人的なベストはメイ先生の薔薇かな、

気持ち悪いくらいに出来過ぎた幸福な展開が残酷に覆されるとこが良かった。