七編が収録された短編集、
古くからの伝統やらが現代にも残っているという世界観で推理が行われる。
主人公は留学生の女性で、日本にはこんな文化が……と驚く役割、
人柱という職業の青年が探偵役となる。
人柱はミイラと出会う
大掛かりな建築工事には神様への人質として人柱なる職業の人物が必要であり、
人柱は地下の狭い空間に数か月から数年も幽閉される。
とある建築物が完成して人柱が解放される儀式の最中、
人柱がいるはずの空間には寝袋に詰め込まれたミイラしかいなかった。
というミイラの話。
人柱という職業が成立している世界観の説明が為されるって感じながら、
同じく人柱の青年が僅かな手掛かりから状況を推理するのが面白かった。
黒衣は議場から消える
議場の席では議員一人につき黒衣と呼ばれるサポート役が付いているが、
とある議員の発言となった際、議員の背後には黒衣がいなかった。
黒衣がいない為に発言さえ出来なかった議員、
そして議会が終わった後には一人の黒衣の死体があった……
という黒衣の話。
殺害された黒衣に何があったのか?
それを突き詰めることで悲壮な真実が浮かび上がる展開は良かった。
お歯黒は独身に似合わない
既婚女性は歯を真っ黒にしているのが当たり前、
それなのに独身であるはずの女性が車の中で歯を黒く染めていた。
彼女はどういった理由でお歯黒にしているのか?
というお歯黒の話。
独身なのにお歯黒にしている謎ってのがそもそも突飛で面白いが、
そこから更に踏み込み、犯罪の示唆にまで広がっていくのが良かった。
まあ、この辺りまで来ると探偵役が万能過ぎる感はあるけど。
厄年は怪我に注意
厄年になったら一年間の休暇が与えられる。
そして休暇を取り始めた三人のうち、二人が事故により怪我を負った。
事故の原因とは? もう一人も事故に遭うのではないか?
という厄年の話。
厄年になったら強制的に一年間休まなければならない。
その一年間をどのように使うのか、オチと主人公の最後の一文が痛快だった。
個人的にはこれがベストかな。
鷹は大空に舞う
警察犬ならぬ警察鷹が犯罪者を追い立てる、
その捕り物の最中、鷹が犯罪者を殺してしまう。
警察鷹は訓練を積み重ねており、人を殺すことなど有り得ないはずだった。
果たして警察鷹の行動には何が秘められていたのか……
という鷹の話。
ジレンマのようなエゴのような、シンプルな様相を呈しながら、
主人公の外国人的な思考が尚も異文化を示していた。
ミョウガは心に効くクスリ
日本人は忘れたいことがあった時にミョウガを食べる。
子供が轢き逃げされた現場を目撃してしまった主婦は忘れたいとミョウガを食べ、
その家に大量のミョウガが届けられた。
一体、誰がミョウガを送ってきたのか?
大量のミョウガが示すものとは?
というミョウガの話。
常に一歩引いた感のある探偵役が人間味を表すのは無難に面白かった。
参勤交代は知事の務め
参勤交代が当たり前に行われている現代、
新たに知事となった男は知事公館で暮らすことになる。
しかし知事公館のベッド、そのマットの下には大量の紙幣が押し込まれていた。
紙幣は誰のものなのか、そもそも紙幣の意図とは?
という参勤交代の話。
隔月で東京に呼び出される参勤交代、そこに隠された陰鬱な真実はなかなかだった。
まあ、それ以上にオチが面白かったけど。
そうするしかないよなっていうオチながら、積み上げたキャラクターの反応が良かった。
てっきり長編かと思ったので肩透かしを食らったけど、
ヒストリエばりに 「文化がちがーう」 を事細かに説明する流れは安定感がある。
そこに主人公の恋愛模様を含み、心情の変化が一編ずつ語られるのはなかなかだった。