何とダイナーⅡ が始まったらしいけど、それとは無関係に読んだ。
四つの短編が入った単行本、カバーがないのに洒落てる。
いんちき小僧
腹を空かし過ぎて万引きをした主人公は屑と出会い、
その屑の子の考えた売りを始める。
公園の葉っぱを集めて犬の糞を詰めて煙草のように拵えて薬と偽って売る。
いくらかを儲けた結果、組の者に見つかってボコボコにされる。
屑は自分の子供が発案者だと情報を売り、主人公はその子の身を案じるが……。
という屑だらけの話なのに最後はどこか救われたような描写が良い意味で気持ち悪い。
子供が親を求める純粋さと、現実の仕打ちが秀逸。
マミーボコボコ
三十数年振りに娘から連絡が入り会うことになったおっさん、
そのおっさんに付き添ってくれと頼まれた主人公。
出向いた先ではテレビ局の人間がたむろしており、大家族の日常を撮影していた。
娘はひたすら子供を孕み、旦那はテレビ局の人間と楽しそうに酒を飲んでいた。
子供たちは家族を異常と受け止めて達観した生活を送っていた。
付き添っただけの主人公はおっさんと大家族の再会、そのシナリオを傍観する。
テレビの絵になる部分が撮影され、裏では誰もが粛々としている。
やがて一つの事件が起こり、大家族はテレビから見放された。
それを見守るだけの主人公だったが、家族の一員であるおっさんは……。
という、テレビでよくある? 大家族をモチーフにした話。
大家族ものの裏側がこんな感じだったらという最底辺で屑っぽい描写が、
最後の救いを際立たせてる感じ。
敬語の語り部が最後の最後にため口になって救いを口にするのが心地良い。
顔が不自由で素敵な売女
ヘルスで出会った女は頭頂が禿げていた。
妙な成り行きから女と親しくなった主人公は自身の働く飲み屋で共にくだを巻き、
店主であるマンキューの厄介になっていた。
そこに一人の男が現れる。
男は閉店を告げられても平然と居座り、酒を要求した。
追い出そうとする主人公だったが、男がある名前を出すとマンキューの態度が変わる。
マンキューは過去、人を殺していた。
罪を償って今の仕事をしていたが、そこに現れたのは殺した子の親だった。
その日から男は毎日のように店へと顔を出すようになり……。
とまあ、過去の罪から誠実とも思える男が破綻していく姿が描かれる。
男の嫌がらせによって段々とおかしくなっていくマンキューの姿は痛々しく、
こんなのどうやってもバッドエンドだろと陰鬱になっていたら唐突に終わる。
ハッピーエンドではないけど、こんだけ素敵な売女だったらそりゃ忘れないだろうな、と。
デブを捨てに
借金を返せない主人公は一つの選択を迫られる。
腕か、デブか。
一年前、同じ理由で主人公は腕の骨を折られていた。
再び同じところを折られる恐怖から、主人公はデブを選んだ。
デブを捨ててこい。
そうして主人公は車の助手席に詰め込まれたデブを捨てに行くことになる。
道中、デブは盛大に吐いたりそのせいで金を失ったり大食いに挑戦して金を得たり、
大切な写真、痩せている姿を撮った一枚だけの写真を奪われて取り返しに行ったりと、
信じられないことばかりが起こり……。
という、デブがやたらとかっこいい話。
大食いにチャレンジする際のデブの潔さやら頭のおかしすぎる店の描写やら、
いかにもコミカルで楽しめた。
ラストも爽快感たっぷりで、何となくダイナーを思い出した。