令和6年の「天守物語」 | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年8月23日19時公演@東京芸術劇場シアターウエスト

私はどうにもこうにも「天守物語」ってものが好きらしい。耽美なファンタジー。
やはり篠井さんのも観ないと!と、思っておりました。ようやくです。

「超攻撃派」というキャッチだけど科白は変わらず、衣装や演出が現代風になっていて…でも核は鏡花のまま…。
どこを残してどこまで外しても大丈夫か。このへんのさじ加減はクリエイターの主義主張ですね。

コンパクトかつシンプルなステージを、コの字型に囲んだ客席220が見守る。少ないですよねー。宝塚大劇場の10分の1…。
最初のあたりの、花釣りやら蝶々の舞う場面やらはいつも微妙に長いなあと思うけど、幻想の描出には必須なんでしょうね。
後半にはダンスっぽい合戦場面あり、鼓と笙の生演奏が入って突然能の世界が出現したりと、メリハリのある演出。客席通路も使われて、役者さんが間近に。

富姫たる篠井さんの科白は明瞭で、大声じゃないのに届く。仕草や表情がときにはっとするほど美しくて「姫君」と言われるとそんな気もしてくる、舞台の不可思議さ。
こういう人、いま他にいないですね…梨園の外には。

図書之助役は安里勇哉さん(初めて拝見)。TOKYO 流星群というユニットの方だそうで、ストプレやらミュージカルやらいろいろの出演歴。きっとファンがついてるのだろうな。
科白は早くなると時々私には拾えなかったけど(耳がよくないので私のせい)、背もあってなかなか頼もしい武者ぶりでした。

亀姫は林佑樹さん。これまた初見。最初女性なのか男性なのかよくわかんなくて…まあでもそれはどうでもいいというか…独特の風情の中、どこか骨っぽさもある。そこは、あちこちの劇団を渡り歩いてきた気骨なんだろうか。ドレスと着物の中間くらいの衣装の着こなしも素敵でした。科白もよい。

富姫と亀姫、2人のセンター役を性を超えた役者が演じる…歌舞伎という強固な枠の外でも。
それが違和感なき時代になったのだなという思い。

考えてみれば、人を好きになったり、綺麗なものを求めたり…という感情は、性別とか不問ですものね。
制度はまだまだ追い付いてないけれど、こうして娯楽の世界からもひたひたと変化が起こり、容認されていく素地ができる…。
来月で辞めちゃう岸田さんは「社会が変わってしまう」と言ったけど古い世界の住人であるあなたたちが知らないだけ。
それに、変わって「しまう」って何。それはよろしくないことなの?今が理想なの?万物は流転す、なのに。

アフターにはトークショーがあり、やんちゃな安里さん、色っぽくも落ち着いた林さん、達観した篠井さん…の組み合わせが楽しかったです。

池袋からの帰り、いつも山手線に乗ってるけど埼京線に乗るとめちゃくちゃ空いてるのね。こんどからそうしよっと…。