第17回世界バレエフェスティバル全幕プロ「ラ・バヤデール」 | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

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鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年7月28日15時公演
「ラ・バヤデール」
ニキヤ オリガ・スミルノワ
ソロル ヴィクター・カイシェタ
ガムザッティ 伝田陽美
ハイ・ブラーミン 柄本 弾
ゴールデンアイドル 池本祥真

来てしまいました、バレエ夏の陣…。
この湿った熱帯日本へようこそ、輝けるダンサーのみなさま。体調にはくれぐれも気をつけてください。

メインなのは、AとB2つ用意されたガラ・プログラムで、全幕プロはフェスティバルの幕開けを飾ります。基本的にはガラコンサートなので貴重な全幕もの。
この全幕プロはもう一日あり、そちらはクイーン・ネラとリース・クラークのロイヤルバレエペア。
迷いました。が、ネラさまはときどき来日してくれるけど、スミルノワは次わからないし…と思って、スミルノワの日を取りました。ほんとは両方観たかった😭

「ラ・バヤデール」とは、インドの舞姫のこと。

オリガ・スミルノワは、ワガノワアカデミーを首席で出てボリショイに直行(←結構びっくり)し、今回のウクライナ侵攻に抗議して故郷脱出。現在オランダ国立バレエのプリンシパルです。
彼女、おじいちゃんがウクライナ人だそう。

スミルノワは、ポジション的には私のなかでずっと、ザハロワ(@ボリショイ)を継ぐひとだった。
ウクライナっぽい卵形の優美な輪郭と、強すぎないニュートラルな美貌。手足めちゃくちゃ細く長く、どこどこまでも伸びて天を指し、技術的にもケチのつけようがない。全てが王道。
世間さまが想像する「ザ・バレリーナ」って感じの方です。

パリオペラ座のダンサーの方々は、もちろん美男美女揃いなんだけど、もう少し人間ぽいというか、派手で華やかで、いまでも煙草吸ってそうで(イメージ)、そのへんのカフェに座ってそうな気もする。
だけどロシアのダンサーは…少し、あちらが透けて見える感じ。トランスペアレント。

まあ、そんなスミルノワさまなのですが、こんな騒動で国外に出てしまって、どうなっちゃうのだろうと、勝手に心配しておりました。でも、居場所を見つけたのかな。それとも旅の途上?
昔と変わらぬ完璧な踊り、完璧な造型。あまりに模範的に美しくて、ちょっと形容に困ります。
こんな突出して美しい舞姫がいたら、そりゃ戦士だろうと大僧正だろうと血迷うよね…。

(バレエでは鉄板の)二人の女の間でふらふら迷う男、ソロルはヴィクター・カイシェタ。細身の長身、そして髭つけて、まぎれもなき「おとなの男」って感じがぷんぷんと…。
彼と美女スミルノワが2人で踊ると成熟感漂い過ぎて、ほんとに日本人ダンサーは(男性も含め)愛らしいというかなんというか…。ちょいと、纏ってる空気が違いましたね。

それでも、恋敵ガムザッティたる伝田さんは素敵でした。
西洋の美学の煮こごりみたいなバレエを熱心に学んでいる日本人、まるでその代表!受けて立とう!みたいに観てしまった私。気持ちも踊りも表情も堂々と、負けてなかった。芯が感じられる踊りでした。

前も書いたかもしれませんが、「ラ・バヤデール」はニキヤとガムザッティの対比や比重、描かれ方がどんどん変わっていってます。
昔はか弱い悲劇のヒロイン・ニキヤに権高いお嬢様のガムザ(男性の好きそうな定番対立構造ですね)。
それがだんだん
「いや、ガムザだって真剣にソロルを好きだったんだよー」
とか
「ニキヤ意外と気が強い。こいつ可愛くない」
とか、結局、
「ソロルが馬鹿すぎる」とか(笑)
こういうの、とても面白い。時代を映しつつ、演出家が競っていたりね。
宝塚の名作でも。娘①と②格の比重が変わっていったり、物語に別の意味を与えるような演出が、出てくるといいですね。

これから、バレエ夏の陣は続きます。観る方もよく食べてよく寝て、頑張らないと。