平原サティーン「ムーラン・ルージュ」を見ました! | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

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鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。

 

2024年7月12日13時公演
 
昨年はのぞみサティーンを見るのに心も財布もいっぱいいっぱいで、今年ようやく拝見しました、平原綾香サティーン!
 
すっごくよかったです!
 
一番有名な彼女の歌唱「ジュピター」の出だしの印象が強いと、彼女の発声(呼気が多いのかな?)って…と思っている向きもあるかもしれません。
が、なんのなんの!パーンと声を張るときのパワーは凄いですし、何の不足もありません。
オペラティックというのとは違う。スコーンと抜けて歌詞も聞き取れる、いわゆるミュージカル歌唱でもないし、もちろん宝塚歌唱じゃ全然ない。聞きなれないけど癖になるというか、これが「平原綾香歌唱」なんだろうなと思いました。

演技もとてもいい。シンガーだから科白が…という意見も聞きましたけど、全くそんなことなくて、サティーンの心情が自然に、そして痛いほど伝わってきました。
一番いいなーと思ったのは、クリスチャンを公爵の前で手ひどく振ったあと、下手に残って大声で泣くんです。のぞみさんはそこまで泣かなかったと思う。
私はここ、解釈の問題でどちらでもいいと思いますが、身も世もなく大泣きするのもありだと。
明日の命も分からない中、心にもないことを言って一番そばにいて欲しい人をずたずたにし、でも彼の歌を世に出すために初日までは公爵の庇護が必要、と…。恋人に対して、女としての愛だけじゃなくて母性があるのね。そういう女主人公に、平原さんの貫禄はとても合っていた。
あとはやはり「…私の、天才!」かな。いい場面ですよね…なんならクリスチャンとのラブラブシーンよりも胸を打たれる。
 
井上クリスチャンも今年は初めて拝見。科白に心が一層込められていたような。
歌わせれば天下一品なのはわかってますが若々しい演技も少しも無理なく、磨きかかってきてピカピカ。男性のミュージカルスターは先輩たちがたくさん道を作ってくれてますので、熟年役もたくさんある。まだまだこれからも活躍していくんだろうな、と頼もしかったです。
 
松村ジドラーは、1週間前に見たのと全然違って、めちゃこなれてました。すごい!こういうの目の当たりにすると、やはり複数回見たいと思っちゃうんだよねー贅沢にも…。
 
平原さんの「ムーラン・ルージュ」を観て、ああ、私やっと「作品」で観られたのかも?と思いました。
やはりのぞみさんが出ていると、昨年は初演だったこともあり、はらはらしたり安心したりいろいろで(←余計なお世話すぎる)彼女中心に見てしまう。
今回はそれから遠く、フラットに物語を感じることができたと思います。
 
公爵の館に押しかけてくるクリスチャン(一体門番は何してるの)の、事態をめちゃくちゃにする暴挙も、あーアブサンがぶ飲みでちょっとイっちゃってるからできるのね、とか分かったし。ほんと、何回見てるのよ私。
あるいは、サティーンを妬んでいたはずのニニがとても優しいのも、自分がサンティアゴとの愛を知ったからなんだな、とか(私見です)。
ストレートなヌードよりも妄想を掻き立てる衣装のダンサーたちは、ここムーラン・ルージュが性を売る場所だという直喩。
(パリオペラ座だって、今は芸術の顔つきしてますが、かつてはそうだった)
 
ほんと、無理して見てよかったなーと思いました。
平原さんの科白はもちろんご自分のものになっていますが、ときどきのぞみさんの声色や言い回しに不思議に似ているときもあって。いや、よきことだと思います。お互いに学びあって成長していくんだと思うから。
こうした、拮抗している実力の持ち主のダブルキャストっていろんな効果もあるんだろうなあ…。
(まぁ、役者さんはいちいち比べられて辛いとも聞きますけど、そこはプロだからね)
 
もしお迷いの方がいらっしゃいましたら、ぜひ両サティーンをご覧になることをお勧めします(←僭越すぎる、すみません)。
あれ、もうチケットなんてないのかな?