この夏、パリ・オペラ座はふたてに分かれて東京でガラ・コンサート。なんで分かれたのか事情は知らないけれども、どっちも観たい、メンバー上手い具合に分けられちゃってるし。でもお財布も厳しいし…
と、迷ってる間にスケジュール入らなくなってしまって、結局先に売り出されたこちら「グラン・ガラ」を1回、観に行く結果になりました。ほんとはウクライナバレエも観に行きたかったのに。夏の出稼ぎ対応に、ギチギチだよー。
オペラ座はエレガンスと眩しい美しさが身上で、ドラマティックなイギリスのロイヤル、アクロバティックでパワフルなボリショイ、典雅なマリインスキーと、観客の好みはいろいろ。ハンブルクバレエは振付家ノイマイヤーの知名度とカリスマ性に一本被り。
ですが「バレエ観てみたい!」と思う方には、パリ・オペラ座バレエが一番イメージにぴったりなのではないかなあ、と思う私です。
美男美女ばかりで「美の化身」みたいな言葉が嘘っぽく聞こえない。コンテンポラリーでもどこか優雅。
以前は純血主義というか、フランス人しか正団員なれませんから!みたいな感じでした(国家公務員だから外国人比率決まってるという話も聞きます…詳しくないのでよくわかりませんけど)が、今やエトワールにもアジア系のダンサーが。オニール八菜さん(日本とニュージーランドのハーフ)のエトワール就任のことは、バレエファンでなくてもご存じのかたもいらっしゃるかも?
他にも日系の方がちらほら在籍しておられます。ボーダーレスな時代ですよね…。
演目全部は書かないけど、とにかく、訓練されまくった素晴らしく綺麗なかたがた。
特に座長のマチュー・ガニオは変わらず光輝いてるなーと呆気にとられました。もうそれほど若くないのに、お人形みたいな容貌とスタイルと。ガラスケースに入れて飾っておきたい。
私は、このカンパニーでは(もう片方の来日ガラに出ている)マチアス・エイマンというダンサーが好きなのですが、とにかくマチューの華には恐れ入る。そうですね、ほんとはのぞみさんを好きなんだけど、柚香さんを観るときに感じる「畏怖」のような(笑)。
彼、ダンス面では最近観るときはサポート役が多い気がします。でも「オネーギン」みたいな性悪イケオジの役も似合い、時が過ぎていくなーと感じ入る。
ドロテ・ジルベールは既に貫禄たっぷりでもはや女優の域。ユーゴ・マルシャン(好き!)との「マイヤリング」(宝塚ファンてきには、うたかた)は恐ろしく難しそうでなにがどうなってんのかよくわからないくらいで、観るたび少しだけ胸が悪くなる…早い話あまり得意でない…なのですが、火花散らす芝居ダンスなのはいやというほどわかりました。
よくこんなもの作るよね…そして踊るよね…驚異。
あと、私かなり好きな「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレベイテッド」(ウィリアム・フォーサイス)を久しぶりに観たのですが、あれ?こんなんだっけ?と。も少しシャープで触ると切れそうな作品というのが私のイメージなんだけど…な。
ビアンカ・スクダモアという今昇り調子のスジェ(ソリスト)が踊ったのですけど、脚が美しくてポワントが強い…なれどなんだか胴体ががっしりしてて重そうな?うーん。なんか「突き詰めギリギリ感」が…いいのか、これで?
それにしてもフォーサイスって今評価されていないのかなー一時は一世風靡な感じだったのに…今、どうしているのだろうか。フランクフルトバレエが彼を解任してからはめっきり話を(受け身では)聞かなくなりました。もちろん、こちらから観に行けばよいのでしょうが。
第二部はコンテもクラシックもみんなめちゃよかった!
リュドミラ・パリエロ上手すぎだし、アマンディーヌはときどき、マリシア・ハイデに見えた。踊っているのか芝居してるのか。
そして、こないだハンブルクでも「椿姫」客演を観たばかりのシュツットガルトのフリーデマン・フォーゲルも、パリオペになんなく馴染んでて、その変幻自在さに目を見張りました。若い頃から観ていますけど、本物の世界的なダンサーになったなーと感慨深いです。
今回はクララ・ムーセーニュという日仏ハーフのダンサーがメンバーで、なかなかの若きテクニシャン。一番で入団したらしくて、これから期待ですね。
みなさまそんなに死ぬほどリハーサルとかしてなくてしれっと一点集中して踊ってるのかも知れないけど、こういうの、自家薬籠中の物とかいうんでしたっけ、芸術を生業とするプロの、極めつけの職人芸。ガラなのに全幕観てるような引き付け力というか、ああまた全幕見たいなあと思わせてくれるというか。
そして私は、この陶酔を欲しくて舞台を観ているのだろうと思う。
だから宝塚歌劇にも、感心より陶酔を求める…宝塚はもともと「陶酔」に近いフレームをもっているから、そこから遠ざかっちゃうとがっかりも大きいのかな。
宝塚の贔屓が卒業してもありがたくもいろいろ活躍してくれるし、いきなり日比谷とは縁は切れないし(一回は見たいジェンヌさんたくさんいる)、いろんな公演チケットの価格はめっきり高くなるしで、ちょっと財政上見直さねばと思っているのです。
…が…誘惑に打ち勝つにはいったいどうしたらいいのであろうか。トホホ。