芸術は生きる力。第16回世界バレエフェスティバルAプロ② | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。

 

 
2021年8月14日14時公演(承前)
 
第2部冒頭では、今年亡くなった本フェスティバルの常連、カルラ・フラッチとパトリック・デュポンの追悼ということで、かつての映像が投射されました。
フラッチの映像はものすごく古くて大写しになるとブレブレ…ですが、ラ・シルフィードの典雅な仕草は伝わってきた。
パトリックの映像は、リアルで見た時の興奮をまざまざと蘇らせてくれました。白鳥の道化と、ルディエールと組んだバジルでした。外連味たっぷり、派手でサービス精神旺盛で、観客の喝采をエネルギーに変えていたような彼。今電子情報で見てもそのさまは鮮烈で、リアル会場からは自然に拍手が巻き起こりました。このころのパトリック、そしてルジマトフの人気はすごかった。まさにここ、同じ舞台であの熱狂のパフォーマンスは行われたのだ…。
 
第2部

「白鳥の湖」第1幕のソロ

(ダニール・シムキン)

パリオペラ座のエトワールであり、メートル・ド・バレエだったパトリス・バール振付の、憂愁に沈むジークフリードの踊り。サーカスみたいにぴょんぴょん飛び跳ねていたシムキンが、その身体能力を生かしてゆったりと、雄弁に語る。青春の終わりの予感。

小柄なのが惜しまれるけれどソロなら問題ありません。彼もこういう歳になったんだなーと…。

私の後ろに座っていらした女性は、さかんに隣の方とお話しされていて「彼、なにかのグランパ踊ってくれればいいのに…。まぁ、似合ってたけど」とおっしゃっていましたが。うーん、私はむしろこういうのがチャレンジングで、本人が幅を広げようと思ってるのだと解釈しましたけどね。人の感じ方はさまざまだ。

 

「ジュエルズ」よりダイヤモンド

(アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ)

かねてより、「ダイヤモンド」を飽きさせずに見せてくれるダンサーが好きと思っている私。かつてのロパートキナやルテステュがそうでした。

アルビッソンもとてもよかったです。典雅な動きと衣装に負けない輝きはさすがエトワールだし、うちに秘めた揺るぎなさよ。まさにダイヤモンドって感じです。

そしてマチューったら、この踊りはほぼ支え手ではありますが、変わらずになんと王子様な風貌なことか…。ほんとうに、作り物のお人形さんみたい。

パリオペは美男美女じゃないと駄目ですね、やはり。それを期待してしまうもの。

 

「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ

(金子扶生、ワディム・ムンダギロフ)

大好きなパ・ド・ドゥ。恋の高揚をこれほどに描写した作品はないと思います。音楽との一体感もただただ、美しい。誰かがこれを踊ってくれないと、このバレエフェスティバルは消化不良に終わりそう(私がですが)。

マクミラン作品ですからはやりロイヤルの人が踊りますが、金子さん、ちょっと緊張していたかな?艶やかなファム・ファタル感があるとさらによかったかも。踊りは本当に端正で綺麗です。

しかしまあ、この催しに海外の日本人ダンサーが複数招聘されるようになるとは…感慨無量。ワディムは安定のうまさとパートナーシップでした。

 

「ル・パルク」

(アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス)

私の友人たちには大層評判のいいこの作品、私はいまひとつ「ずば抜けた良さ」がわからないんですよね。ごめんなさい。もちろん退屈ではないのですが絶賛までいかないというか…。とはいえ、フェリとゴメスの力強さ。ベテランならではの存在感はひしひしと伝わりました。音楽もうつくしい。

 

「海賊」

(エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン)

「ル・パルク」と対照的に、誰にでも楽しめるバレエの代表作。

あちこちで書かれてるから見てるような気がしてしまうけど、私はキム・キミンは初見だと思います。アジア人初のマリインスキープリンシパル。

いやー素晴らしかった。いかにもアジア人男性ダンサーという感じの細さと羽のごとき軽さ。技術は的確。線は細いが独特のオーラあり。胸がすくようでした。海賊はこうでなくちゃね。バレエを見る楽しみのひとつは、間違いなくこれ!です。

なんでこんな人が日本人にも出てこないんですかね。こういう男性は体操とかフィギュアスケートに行っちゃうのかしら…。

 

やはり一度には書けないなーもう一回、続けます。