「白鳥の湖」第1幕のソロ
(ダニール・シムキン)
パリオペラ座のエトワールであり、メートル・ド・バレエだったパトリス・バール振付の、憂愁に沈むジークフリードの踊り。サーカスみたいにぴょんぴょん飛び跳ねていたシムキンが、その身体能力を生かしてゆったりと、雄弁に語る。青春の終わりの予感。
小柄なのが惜しまれるけれどソロなら問題ありません。彼もこういう歳になったんだなーと…。
私の後ろに座っていらした女性は、さかんに隣の方とお話しされていて「彼、なにかのグランパ踊ってくれればいいのに…。まぁ、似合ってたけど」とおっしゃっていましたが。うーん、私はむしろこういうのがチャレンジングで、本人が幅を広げようと思ってるのだと解釈しましたけどね。人の感じ方はさまざまだ。
「ジュエルズ」よりダイヤモンド
(アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ)
かねてより、「ダイヤモンド」を飽きさせずに見せてくれるダンサーが好きと思っている私。かつてのロパートキナやルテステュがそうでした。
アルビッソンもとてもよかったです。典雅な動きと衣装に負けない輝きはさすがエトワールだし、うちに秘めた揺るぎなさよ。まさにダイヤモンドって感じです。
そしてマチューったら、この踊りはほぼ支え手ではありますが、変わらずになんと王子様な風貌なことか…。ほんとうに、作り物のお人形さんみたい。
パリオペは美男美女じゃないと駄目ですね、やはり。それを期待してしまうもの。
「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
(金子扶生、ワディム・ムンダギロフ)
大好きなパ・ド・ドゥ。恋の高揚をこれほどに描写した作品はないと思います。音楽との一体感もただただ、美しい。誰かがこれを踊ってくれないと、このバレエフェスティバルは消化不良に終わりそう(私がですが)。
マクミラン作品ですからはやりロイヤルの人が踊りますが、金子さん、ちょっと緊張していたかな?艶やかなファム・ファタル感があるとさらによかったかも。踊りは本当に端正で綺麗です。
しかしまあ、この催しに海外の日本人ダンサーが複数招聘されるようになるとは…感慨無量。ワディムは安定のうまさとパートナーシップでした。
「ル・パルク」
(アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス)
私の友人たちには大層評判のいいこの作品、私はいまひとつ「ずば抜けた良さ」がわからないんですよね。ごめんなさい。もちろん退屈ではないのですが絶賛までいかないというか…。とはいえ、フェリとゴメスの力強さ。ベテランならではの存在感はひしひしと伝わりました。音楽もうつくしい。
「海賊」
(エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン)
「ル・パルク」と対照的に、誰にでも楽しめるバレエの代表作。
あちこちで書かれてるから見てるような気がしてしまうけど、私はキム・キミンは初見だと思います。アジア人初のマリインスキープリンシパル。
いやー素晴らしかった。いかにもアジア人男性ダンサーという感じの細さと羽のごとき軽さ。技術は的確。線は細いが独特のオーラあり。胸がすくようでした。海賊はこうでなくちゃね。バレエを見る楽しみのひとつは、間違いなくこれ!です。
なんでこんな人が日本人にも出てこないんですかね。こういう男性は体操とかフィギュアスケートに行っちゃうのかしら…。
やはり一度には書けないなーもう一回、続けます。