雑話264「ミレー展」
現在、三菱一号館美術館で開催中の「ボストン美術館 ミレー展」に行ってきました。
ジャン=フランソワ・ミレーは19世紀にフランスで活躍した画家で、田園で働く農民の姿を描いた作品で有名です。
ミレーの代表作である「落穂拾い」や「晩鐘」なら、その題名は知らなくても、画像を見たことのない人はほとんどいないでしょう。
本展は、ミレーの画業と同時代の画家への影響、そして彼らの後継者について紹介するものです。
友人の画家の勧めにより移り住んだ、パリ郊外にあるバルビゾンという農村で、ミレーは農作業の様々な場面や、シャイイの平原、フォンテーヌブローの森で働く男女の姿に惹きつけられました。
ジャン=フランソワ・ミレー「馬鈴薯植え」1861年頃
「馬鈴薯植え」では、農民夫婦が一緒に穴を掘って馬鈴薯を植えており、彼らの赤ん坊はロバにつながれた樹の陰で眠っている場面が描かれています。
馬鈴薯を植えるという行為に当時の人々は貧困を読み取ったでしょう。
なぜなら、かつてはもっぱら家畜の飼料と連想されてきた馬鈴薯が、この家族にとっては高価なパンに替わってでんぷん質を補うものとして扱われているからです。
ミレーは、そんな彼らを愛情をこめて表現しています。
夫婦の描写において、ミレーは”親密に結びついたふたつの存在が働く様子を感動的に表現すること、さらにはふたりの動きを調和させて、ひとつの動きのようにすること”を心掛けたと語っています。
ミレーはまた、身分の低い農民の生活は美術の題材にふさわしくないという批評に対して、次のように述べています。
”なぜ馬鈴薯や豆を植える仕事が、他のどんな仕事よりもつまらなくて価値がないということになるのか?”
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この展覧会の最大の注目作品で、ミレーの代表作でもある「種をまく人」は、画家を最も象徴する作品のひとつです。
ジャン=フランソワ・ミレー「種をまく人」1850年
この作品は、農民の禁欲的な性質と大地に生きる人としての薄暗い環境への忠誠を強調するような暗い色彩が特徴です。
種をまく農民の姿は堂々としており、皮のように硬く黒い肌は、太陽の下で精を出して働く生活を表しています。
ミレーは作品に描かれた英雄を魅力的な姿にはしていません。さらには、農民の特徴は曖昧で匿名性を帯びています。
この男性から、すべての農民たちは決意と厳粛さ、パリのサロンに出品するにふさわしい英雄的な素質をもって彼らの仕事を成し遂げているという、ミレーの主張が読み取れます。
本展には、このほかにもミレーの大作「羊飼いの娘」を含む、初期から晩年までの作品や、バルビゾン派を代表するコローやルソーなどの作品が多数展示されており、見ごたえのあるものになっています。
会期も残り少ないですが、日本人にもなじみのミレーの作品を間近で見る貴重な機会ですので、お時間の許される方は是非ご覧になってください。
「ボストン美術館 ミレー展」
2014年10月17日~2015年1月12日
三菱一号館美術館




