雑話263「ホドラー展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話263「ホドラー展」

現在、国立西洋美術館で開催中の「フェルディナント・ホドラー展」に行ってきました。




フェルディナント・ホドラーは19世紀末から20世紀初頭に活躍したスイスを代表する画家です。


大規模な室内装飾を数多く手がけ、身近なアルプスの風景を描き続けた彼は、今なおスイスの国民画家として愛されています。


フェルディナント・ホドラー「怒れる人(自画像)」1881年

独自の画風を確立する前のホドラーは、上図のような卑俗な現実を描くことによって伝統的な美の価値基準を大きく揺さぶったレアリスムの影響が強く見られる作品を描いていました。


1880年代半ばに、当時の象徴主義の文学者と出会い、人間の内面や心理といった深層のものを、特にその身振りを通じて象徴化しようとしました。


彼は、身体によって動かされる感情にかたちを与え、そこに生起するリズムを描き出そうとしたのです。


「オイリュトミー」とはよきリズムという意味です。


フェルディナント・ホドラー「オイリュトミー」1895年

ほぼ等身大で描かれた老いたる男たちは、一様にうつむき、緩慢な足取りで左へ進んでいます。


ホドラーは類似する形態の反復とシンメトリックな配置を持った絵画として本作品を描きました。




水平に展開する大規模な画面に形態を配置し、そこに「リズム」を作動させようとしています。


ホドラーは、私たちの生の一秒一秒は、美しく穏やかな運動と反動であり、その歩みが誰も避けられない一方通行路、すなわち「死への道」だと述べています。


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眼に見える体の動きに、眼には見えない感情の表れを見ようとしたホドラーは、自然の現象に潜んでいる内的な構造や秩序にも強い関心を示しました。


ホドラーは自然のなかにさまざまな形態の類似や反復、左右相称な構造や均衡などを見出し、それらを絵画内の秩序として編成しようとしました。


そのため、後半期の風景画では、もはや網膜に映る自然の現象を描いたというより、知覚した現象のなかから形式やパターンを探り出すことが重視されました。


フェルディナント・ホドラー「レマン湖とジュラ山脈(風景の形態リズム)」1908年頃

「レマン湖とジュラ山脈(風景の形態リズム)」では、やや広めにとった空に、斜めのストロークの反復によって白い雲のつづれを描きました。


それら斜線として反復された雲は、水平な2段の直線をなす別の雲によって上下を挟まれ、そのすぐ下には、もはやストロークというよりもタッチに近い、短い線や斑紋からなる雲が、やはり水平に並んでいます。




こうして形態要素がことごとく水平な構造に還元され、淡い帯状の色層もつくるなか、斜めの荒い筆致として反復された雲が、異質なアクセントとなってリズムを生じさせています。


本展には、彼の絵画作品のほかに、彼の作品の集大成ともいえるチューリヒ美術館の階段吹き抜けの壁面を飾る壁画の実物大のコピーと、多数の習作が展示されていて、壁画作家として多くの大作を残した彼の画業の一端を垣間見ることができます。


「フェルディナント・ホドラー展」


東京展

2014年10月7日~2015年1月12日

国立西洋美術館


神戸展

2015年1月24日~4月5日

兵庫県立美術館