雑話260「新印象派展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話260「新印象派展」

現在、あべのハルカス美術館で開催中の「新印象派-光と色のドラマ」展に行ってきました。




本展は、印象派の影響を受けて誕生した新印象派の様式が、ベルギーやオランダにも広がり独自に発展していき、またマティスらによるフォーヴィスム誕生の源泉になっていった軌跡を辿るものです。


新印象派の創始者であるジョルジュ・スーラは、色彩を分割する新たな技法を考案して、静謐で詩的な作品を生み出しました。


「セーヌ川、クールブヴォワにて」は、当時の人々がセーヌ河岸で余暇を過ごす様子を描いた作品です。


ジョルジュ・スーラ「セーヌ川、クールブヴォワにて」1885年

彼の絵は、静かなフレスコ画を想起させるもので、人も風景も永遠にその動きを止めています。


この現代生活への賛美は、一面の揺れ動く純色の点で表現されました。


色彩の鮮やかさと明るさを維持するため、スーラは初めて※視覚混合の理論を採用し、線、形態、色彩は理論に基づいて画面に配し、理想的な調和を生み出す規則に従って作品を制作しました。


※視覚混合の理論とは中間色を作り出すために物理的に絵具を混ぜる代わりに、2つの色を隣同士に配置すれば、その2つの色が混ざったように見えるというもの。実際に混ぜたものより、色が鮮やかになるとされた。




筆触は、極めて変化に富んでおり、建築物は細かな筆触で描かれ、木の葉の描写にはより軽やかな筆触が用いられています。


セーヌ川の川面を描写する際には、繊細な平行線を連ねた網のようであった筆触は、散歩する女性の洗練されたシルエットをほっそりと見せるために、今度は縦に引き伸ばされているのです。


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ポール・シニャックは、スーラとともに新印象派の運動を推進した中心的な画家のひとりです。


「髪を結う女、作品227」は、恋人のベルト・ロブレスを描いた作品です。


ポール・シニャック「髪を結う女、作品227」1892年

髪の毛の渦巻きや、画面手前と鏡の中に繰り返し描かれる壁のうちわなどが、装飾的な効果を与えています。


また、ドレスを結ぶ黄色のリボンや鏡の前の香水の瓶、壁のうちわ、髪を結おうとしてそっと寄り添う指などが、2人の親密さをほのめかしています。




この頃のシニャックは、日本美術からの影響を受けた作品を残していますが、壁のうちわからもその影響を見ることができます。


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1887年には、新印象派の初期作品が、ベルギーの前衛芸術家団体の開催した展覧会で展示され、新印象派に対する熱狂が巻き起こりました。


新印象派の技法を早くから習得したテオ・ファン・レイセベルヘなどの才能豊かな芸術家たちが活躍し、ベルギーは新印象派の第二の故郷となりました。


「マリア・セート、後のアンリ・ヴァン・ド・ヴェルド夫人」は、新印象主義に最も忠実であったレイセベルヘの代表作です。


テオ・ファン・レイセベルヘ「マリア・セート、後のアンリ・ヴァン・ヴェルド夫人」1891年

肖像画を得意としたレイセベルヘは、同僚の画家の婚約者を描いています。


遠くをぼんやり見つめるマリアの表情からは、決意と冷静さ、自信の感覚が窺えます。


レイセベルヘは顔や腕などの表現に富んだ部分に小さなドットを使い、それ以外の部分には大きなドットを使うなどして、肖像画に新印象派の技法を巧みに応用しています。




会場には新印象派の作品のほかに、この様式の理論のもととなった法則についての書籍や、その理論を実践するための図解なども展示されており、新印象派の芸術の科学的な側面も理解できるようになっています。


「新印象派-光と色のドラマ」


〔大阪展〕

あべのハルカス美術館

2014年10月10日~2015年1月12日


〔東京展〕

東京都美術館

2015年1月24日~2015年3月29日