雑話255「オルセー美術館展③」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話255「オルセー美術館展③」

先週に引き続き、「オルセー美術館展」の出品作品をご紹介いたします。


残念ながら、展覧会自体は先週で終わってしまいましたが、見逃した方は是非このブログでその雰囲気だけでも味わっていただきたいと思います。


肖像画を集めた部屋からは、最初にフレデリック・バジールの「家族の集い」をご紹介しましょう。


フレデリック・バジール「家族の集い」1867年

バジールもまたモネやルノワールらと行動を共にしましたが、彼らが印象派と呼ばれるキッカケとなった第1回印象派展が開催される以前の普仏戦争で戦死してしまいました。


この絵はブルジョア階級出身のバジールが、モンペリエ近くの一家の邸宅のテラスで自らの家族を描いたものです。


この頃バジールが、未来の印象派の仲間たちと目指していたものは、近代的主題と外光によって絵画を刷新することでした。




バジールは、フリーズ状の構図の中に、立っている人物と座っている人物を交互に配置し、外光の下で複数の人物をまとめあげようとしています。


印象派の他のメンバーの素早い筆遣いとは違い、作品には細かい仕上げが見受けられますが、マネの「笛を吹く少年」と同様に、なだらかな明暗のグラデーションを使わず、色彩は平板に塗られています。


さて、当時は先鋭的だったこの絵画も、印象派以降の絵画を見慣れている我々にとっては、むしろ保守的な作品に見えてしまいます。


そこで、同じ肖像画の部屋にある伝統的な手法で描かれたレオン・ボナの「パスカ夫人」と比較してみましょう。


レオン・ボナ「パスカ夫人」1874年

芸術アカデミーの審査員でもあったボナの絵は、まさにバジールらが、硬直化してしまったとみていた主流派の芸術です。


この威風堂々たる肖像画は、1875年のサロンの展覧会で大変注目された作品です。モデルのパスカ夫人は、華々しいキャリアを歩んだフランスの女優です。


肖像画家として大きな名声を博したボナは、「パスカ夫人」において、色合いと光によって強めた彼女の存在感の真実らしさや現実らしさによって、彼女の人柄までもを見事に表現しています。


ここでは、彼女の顔の表情と共に絶賛された彼女の腕を見てみましょう。




”恋をする女性の本物の腕”などと評された彼女の腕は、まるで写真のようにリアルに描かれています。


丸みを帯びた腕の立体感は見事なグラデーションで表現され、手の甲には血管が浮き出ている様子まで見ることができます。


こうして比べれば、先のバジールの作品との違いは一目瞭然であり、当時の観客の驚きがどれほどのものだったかが想像に難くないですね。