雑話254「オルセー美術館展②」
先週に引き続き、オルセー美術館展の出展作品をご紹介いたします。
バスティアン=ルパージュと同じ部屋には、有名なギュスターヴ・カイユボットの「床に鉋をかける人々」がありました。
ギュスターヴ・カイユボット「床に鉋をかける人々」1875年
カイユボットはモネやルノワールらと行動を共にした印象派の画家の1人で、近代都市としてのパリを好んで描きました。
ここに描かれているのは、上半身裸で腕に汗を光らせ、床板の鉋掛けに励む三人の労働者です。
歴史やキリスト教から得た題材ではなく、平凡な労働者をモティーフにしただけでも当時としては受け入れられにくかったのですが、人々をさらに困惑させたのは特異な空間の扱いでした。
高い視点が虚構のローアングルでこの場面をとらえ、壁をかなり低い位置で切断し、消失点を中央からずらしています。
また、広角レンズで見たような極端な短縮法により、画面手前にある労働者の腕は引き延ばされ、ワインの便やグラスは並外れて大きく描かれています。
これらは視覚的な体験をそのままに捉えようとした試みであり、一見すると伝統的に見えるカイユボットの作品が現代的な絵画であると見られることとなった理由なのです。
実際に見た「床に鉋をかける人々」は思っていたより随分小さく感じましたが、労働者を描いた作品にもかかわらず、とてもスタイリッシュな印象を持ちました。
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次にご紹介するのは、カイユボットの同志である、クロード・モネの見事な雪景色を描いた作品です。
クロード・モネ「かささぎ」1868-69年
モネは画業の初期のころから雪景色というテーマに心を惹かれていました。
このテーマは、白一色によるのではなく、パレットの様々な色調を駆使して大地を青みがかった色彩で輝かせる表現の可能性を開いてくれました。
若きモネは、青みがかった白、すみれ色がかった白など様々な色調でヴァリエーションをつけた白を自由自在に駆使し、凝縮したマティエールで、冬の太陽を浴びて輝く光に満ちた雪景色を表現しようとしました。
柵の上には、かささぎが黒いトーンでくっきりと描き出されており、この人影のない空間で、唯一の動物としてい描かれています。
樹木や生け垣の陰影が、太陽光の反射によっていっそう輝く雪に覆われた地表を際立させ、その一方で、生け垣や柵、樹木の幹が暗色の線ではっきりと描かれています。
この絵は雪景色を描いた作品のなかでも、絵画史上最も見事で、最も知られた作品といわれています。
実際に作品を目の当たりにしても、他の雪景色の作品が白一色の単調なものとなっているのに対して、「かささぎ」の雪の輝くような描写は、まさに目を喜ばせてくれるといえるほど素晴らしいものでした。





