雑話252「デュフィ展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話252「デュフィ展」

今週は、9月28日まであべのハルカス美術館で開催されていました「デュフィ展」をご紹介いたします。




ラウル・デュフィは、20世紀前半にフランスで活躍した画家で、明るい色彩や軽快な筆さばきで描く独自のスタイルを築きました。


「ル・アーヴルの水上の祭り」は、デュフィの独特のヴィジョンで描かれた最初期の作品です。


ラウル・デュフィ「ル・アーヴルの水上の祭り」1925年

デュフィは1920年代の半ばに、故郷のル・アーヴルの海を特徴的な波線を用いて描いた作品を展開しました。


この平行する波線は、ゆるやかに設定された色面とともに小さな面を構成して海面をパッチワークのようにして覆っています。




また、遠近法的な空間の再現や、対象の間の自然なプロポーションを気にせず、類似したフォルムの船を繰り返すことによって、画面に装飾的なリズムを形成しています。


1920年代も後半になると、デュフィはレガッタや競馬などのテーマを特に好んで取り上げました。


ラウル・デュフィ「馬に乗ったケスラー一家」1932年

上の作品は、石油会社「ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム」の創業者であるオランダ系イギリス人ジャン=バティスト・オーガスト・ケスラーとその家族を描いた肖像画です。


この作品は高さが2メートル以上もある大作であり、青々と茂った木々や草地の小さな花、そして右側に麦畑などが描かれた田園風景を背景にして、ケスラー夫妻の周りに半円を描くようにして5人の娘が配置され、モニュメンタルな集合肖像画として仕上がっています。


木の葉の茂みを表現するため繰り返し描かれた小さな葉のモティーフが、画面を華やかで優美なものにしています。




1930年代後半に、進行性多発関節炎に見舞われたデュフィは、アトリエが着想源そのものとなり、表現スタイルに新たな転換が訪れました。


それは画面に用いられる色彩が繊細なニュアンスを残しながらもほとんど単色になり、その上に素早い線によってモティーフが描き出される様式です。


ラウル・デュフィ「ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ」1952年

こうした新しいスタイルは、音楽愛好家の家族の中に育ったデュフィにとって、馴染み深いモティーフである「音楽」を描く際に取り入れられました。


1952年に制作された「ヴァイオリンのある静物」は、デュフィの集大成といえる作品です。


本作では、画面のほとんどがニュアンスに富んだ赤によって満たされています。


赤はときにその真の鮮やかさにおいて用いられて画面に深い奥行きを与えますが、時に白が加えられることで不透明で浅い空間を生み出しています。




赤い絵具層の上に白や青が重ねられている部分もあり、多様な質のもとに展開される赤は、表情豊かに線描された植物文様とともに音楽のハーモニーにも似た抽象的な構成を作り上げています。


本展にはこの他にも、独自のスタイルを確立するまでの初期の作品や、木版画、それを模様に転用して作られたテキスタイルなど、デュフィが生涯かけて制作した作品群を総括する内容となっています。


ご覧になりたい方は、次の会場である愛知県美術館で10月9日より開催予定ですので、是非そちらでご覧になっていただきたいと思います。