雑話242「疑惑のフェルメール、11億で落札」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話242「疑惑のフェルメール、11億で落札」

今月の8日にロンドンで開催されたオークションにて、フェルメールの作品が出品されました。




フェルメールの作品は現在確認されているものが、30数点しかなく、ほとんどが公的な美術館に所蔵されているため、売り物が極端に少ないことで有名です。


今回出品された「聖プラクセディス」と題された油彩画は、6,242,500ポンド、日本円で約11億円で落札されました。


フェルメールの作品としては、随分安い(11億円で?)とも思われますが、この作品も以前ブログでご紹介したフェルメールの作品同様、真贋論争がありました。


今回オークションを開催したクリスティーズは、アムステルダム国立美術館が顔料分析を行った結果、真作と鑑定できたとしています。


ヨハネス・フェルメール「聖プラクセディス」1655年

「聖プラクセディス」には1655年と記入されており、現在判明している彼の作品のなかで最も初期の作品ということになります。


プラクセディスは、宗教的に迫害された殉教者の身体を親切に扱ったことにより尊敬された聖人です。


ここでは、殉教者の身体を綺麗にしたスポンジを絞り、その血を器に注ぎ込んでいる場面を描いています。


フェリーチェ・フィケレッリ「聖プラクセディス」1645年頃

この宗教画はフェルメールのオリジナルではなく、17世紀にフィレンツェで活躍したバロックの画家、フェリーチェ・フィケレッリの同名の作品をフェルメールが模写したものだとされています。


実際、この2点は酷似していますが、最大の違いは胸元に描かれた十字架です。


※フェルメールの作品に描かれている十字架は、フィケレッリの作品には描かれていません

ちなみに、この作品の出品者は、アメリカの医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの創業者の息子の妻で、昨年亡くなった大富豪のバーバラ・ピエセッカ・ジョンソンさんの財団でした。


家政婦として働いていたことがきっかけで、42歳年上の息子と結婚したのですが、夫の前妻の子供らと巨額の遺産相続をめぐって法廷闘争を繰り広げました。