雑話231「25億円?のポパイ」
先週から今週にかけて、毎年恒例の世界規模の美術品オークションがニューヨークで開催されています。
印象派からコンテンポラリーまで、多くの注目作品が目白押しですが、その中でも特に目を引いたのが、今回ご紹介するジェフ・クーンズの「ポパイ」です。
ジェフ・クーンズ「ポパイ」2009-11年
ジェフ・クーンズは、1955年アメリカ、ペンシルバニア州に生まれで、アメリカのコンテンポラリーアートを代表するアーティストとして現在も活躍中です。
彼はまた、イタリアの有名なポルノ女優で、国会議員も務めたチョチョリーナと結婚したことでも話題になりました。
万華鏡のように、宝石のごとく完璧に艶々の表面に仕上げられたポパイは、高さが2m近くもある巨大なものです。
このステンレス製の彫刻は、クーンズの有名な風船細工のプードルを彫刻にした作品を思い起こさせます。
ジェフ・クーンズ「バルーン・ドッグ」2000年
今回出品の「ポパイ」は3体作られたうちのひとつで、今まで一度もオークションに出品されたことがないだけでなく、この作品は一般に公開されたことすらありません。
この貴重な作品の落札予想価格はオークションのカタログには記載されておらず、知りたい場合はオークション会社にリクエストする必要があります。
これは、特に高額な作品にのみ使われるケースですが、どうやら予想価格は2500万ドル近辺、日本円にして25億円以上とされているようです。
これまでもクーンズの作品は高額で落札されてきましたが、なぜ漫画のキャラクターを彫刻にしただけの作品がこれほど高く評価されているのでしょうか?
元々1929年に新聞掲載の漫画として始まったポパイは、大恐慌という逆境の最中に文化的な現象としての地位を獲得しました。
平凡さでは筋金入りだが、タフで、立ち直りが早く、自信に満ち、何よりも驚異的に強いポパイは、世界的な苦難の時期にアメリカンドリームを人格化する存在でした。
クーンズは大恐慌からほぼ1世紀のちの2009年、新たな財政危機の最中に、このアメリカのチャンピオンを、新世紀のアイコンとして、勇ましい彫刻の形にはめ直されたのです。
極端に誇張された筋肉と誇らしげな割れたあごを持ち、ヘラクレスのように立つポパイは、クーンズを代表する素材であるステンレスを使って、実物大よりも大きな、三次元の身体を与えられました。
注目の「ポパイ」の彫刻は、5月14日のオークションにかけられる予定です。
さて、アメリカのポップカルチャーのアイコンの彫刻は、一体いくらで落札されることになるのでしょうか?



