雑話224「アンディ・ウォーホル展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話224「アンディ・ウォーホル展」

現在、東京、六本木の森美術館で開催中の「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」に行ってきました。




日本で開催されるウォーホルの回顧展としては、史上最大の規模になる本展には、絵画、版画、ドローイング、フィルム、彫刻、写真などの約400点もの作品に加え、「タイムカプセル」と称するウォーホルの私物約300点が公開されています。


これだけ広範囲で、数多い展示になると、とても数回のブログで紹介しきれませんので、特に印象深かった、普段あまりお目にかからないデザイナー時代の作品をご紹介することにします。


ウォーホルはアーティストとしてデビューする前から、かなり成功した商業デザイナーでした。


幼年期から晩年までのウォーホルのポートレートが集められている最初のセクションには、気鋭のデザイナーらしくスタイリッシュな服装できめて、ニューヨークのクライアントを訪問する写真が展示されています。


外回りをするウォーホル1950年

大学の絵画デザイン科を卒業したウォーホルは、早速商業デザイナーとして広告業界で仕事をはじめ、ファッション誌のイラストやさまざまな商品の広告を手がけると、たちまち成功を収めました。


アンディ・ウォーホル「三人の女性ファッション像」1950年代

ウォーホルの広告の仕事でもっとも有名なものに、55年に I ・ミラー・シューズが新聞に連続掲載した、婦人靴の広告のためのイラスト・シリーズがあります。


アンディ・ウォーホル「サンダル」1950年代

こうした広告で多用したのが、ブロッテド・ラインと呼ばれる技法のドローイングです。


ペンで紙にイメージを描き、それに別の紙を押し当ててインクを転写するこの方法は、インクが滲んで独特の描線を可能にし、ウォーホルのトレードマーク的技法となりました。


アンディ・ウォーホル「無題(サム)」1954年頃

主題はファッションや広告はもちろんのこと、人物画や半抽象的なパターンまで多岐にわたりました。


それらは、飼い猫を主題としたイラスト集など彼の作品集として書籍の形で発表したものから、天使やキューピッドを描いたリトグラフ、また何気なく描いたドローイングまでさまざまです。


アンディ・ウォーホル「僕の庭の奥で」1956年頃

展覧会では特にウォーホルがゲイであったことは述べられていませんでしたが、こうした女性的なイラストや、官能的なピンクのキューピッドを見ると、どうしてもそのことを意識せざるを得ません。


しかし、こうした彼独特の感性があったからこそ、のちに描かれる「キャンベル・スープ缶」のシリーズや「マリリン」が生み出されることになったのでしょう。


アンディ・ウォーホル「銀の雲」

展覧会には、冒頭で述べた多くの作品のほかに、「銀の雲」と称した金属化プラスチックフィルムにヘリウムガスを充填した風船を飛ばした部屋や、シルバーファクトリーと呼ばれたウォーホルのスタジオを再現した部屋などがあり、単なる作品の展示以上の大変興味深いものになっています。


シルバーファクトリーを再現した部屋

ウォーホルがお好きな方はもちろん、あまり美術に関心のない方でも楽しんでいただけると思います。お時間の許される方は、一度お立ち寄りになってはいかがでしょうか?


アンディ・ウォーホル展:永遠の15分

森美術館にて2014年5月6日(火)まで開催