雑話218「シャヴァンヌ展②」
先週に引き続き、「シャヴァンヌ展」をご紹介いたします。
後半でご紹介する最初の作品は「海辺の乙女たち」です。
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ「海辺の乙女たち」1879年頃
これは、シャヴァンヌ円熟期の具象的様式を代表するもので、その古典性が最も極まった形で示されたものです。
一見すると、水辺にたたずむ3人の古代風の半裸の女性を表した最も伝統的なイメージであるように思われます。
しかしこの絵は革新的で、非常に特異な作品なのです。その特徴は20世紀初頭の西洋美術におけるモダニズムの先駆けとされてきました。
物語性のない構成、感情に対する無関心あるいは感情の排除、焦点が中心にないこと、といった特徴です。そしてその様式ゆえに、現実的な意味はなく、絵画的な意味だけがあるのです。
次にご紹介するのは、ゴッホやスーラに影響を与えたとされる「美し国」です。
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ「美し国」1882年頃
永遠に快適な土地を古典風の海辺のイメージで表したこの小さな宝石のような絵は、古代ローマの詩人ウェルギリウスによって記されたアルカディア(理想郷)にある「喜びあるれる場所」の典型的表現となっています。
絵の中で風景と人物は、ともに穏やかな幸福の雰囲気や安定という効果を生み出しています。この心地よい場所で人々は気晴らしをしたり、物憂げに佇んでいます。
ゴッホは「美し国」を見てエデンや、女性が多く住む古代ギリシアのレスボス島のことを思ったそうです。
また、スーラは自身の代表作である「グランド・ジャット島の日曜日の午後」のことを「近代化したシャヴァンヌ」と呼び、何度も「美し国」への興味を駆り立てています。
最後にご紹介するのは、シャヴァンヌの最高傑作のひとつである「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」です。
ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」1884-89年頃
彼の典型的作例であるこの作品では、白く透けるようなミューズたちと擬人化された諸芸術がいる牧歌的な情景が、聖なる森という設定のなかで絶妙な展開を見せています。
シャヴァンヌはミューズたちを描くにあたり、月桂樹、松、菓子が葉を茂らせる神聖な森を作り出しました。
高い山々に隔絶されたその喜ばしき平安な土地では、清明なる湖が夕暮れ時の光にブロンド色に輝き、ミューズたちはその魅せられた場所の住人であることを喜んでいると人は思うでしょう。
この作品も、リヨン美術館の同名の記念碑的壁画の再制作版です。
縮小版からもシャヴァンヌのアルカディア風イメージは十分に伝わってくるのですが、その元となった有名な壁画を是非この目で見てみたいものだと思いました。
リヨン美術館階段の壁画装飾 ※今回の展示にはありません
「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア」
Bunkamura ザ・ミュージアム
2014年3月9日(日)まで
その後島根県立美術館に巡回予定





