雑話198「アメリカン・ポップ・アート展 ②クレス・オルデンバーグ」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話198「アメリカン・ポップ・アート展 ②クレス・オルデンバーグ」

先週に引き続き、「アメリカン・ポップ・アート展」の注目作品をご紹介します。


今週は、クレス・オルデンバーグの「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」という作品です。


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クレス・オルデンバーグ「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」1967年

オルデンバーグは大量生産される日用品や食品を石膏などで形作ったオブジェや、それらを巨大化したものをビニールなどの柔らかい素材で形作った「ソフト・スカルプチャー」と呼ばれる立体作品で有名です。


「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」もそんな「ソフト・スカルプチャー」の一つです。


この作品は、オルデンバーグがコロラド州で見たアスペンの山々の風景が着想源になっており、山の尾根から立ち上がる入道雲とドラム・セットの形、さらに雷の轟とドラムの音といったオルデンバーグ独自の自由でしなやかな連想が働いているそうです。


また、この時期、オルデンバーグと同郷のスウェーデン生まれのドラマーと親しくなったことも、オルデンバーグが音の出ないドラムを作るアイディアが生まれるきっかけとなったようです。


ビニールで作られたドラムのパーツは、重力に従って垂れ下がり、元の形をとどめないその姿は、見るものに驚きや違和感を与えます。


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「ジャイアント・ソフト・ドラム・セット」の垂れ下がったドラム

また、オルデンバーグのソフト・スカルプチャーは時に人体の臓器に例えられることがありますが、赤と薄肌色の表面を持ち、ぽってりと投げ出されたドラムのパーツもまた臓器を思わせます。


本展には、この他にも同じソフト・スカルプチャーの「ソフト・ベースボール・バット」や、石膏によって女性用のブラウスを形づくり、絵具を飛び散らせたような粗い筆致で彩色を施した「女性用ブラウス」など、彼の多くの作品を見ることができます。


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クレス・オルデンバーグ「ソフト・ベースボール・バット」1967年

※長さは3m以上あります。

ちなみに、オルデンバーグは、この巨大で柔らかいバットを振り回して町中を歩き、野球をするというパフォーマンスをおこなったそうです。