雑話197「アメリカン・ポップ・アート展 ①ジャスパー・ジョーンズ《地図》」
現在、東京六本木の国立新美術館で開催中の「アメリカン・ポップ・アート展」に行ってきました。
国立新美術館正門
展示作品はすべて、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻という有名なアメリカ人収集家のコレクションの一部です。
夫妻のコレクションは、個人のものとしては世界最大級のポップ・アート・コレクションだといわれています。
アンディ・ウォーホル「キミコ・パワーズ」1972年
※生前のアーティストたちのパトロン及びコレクターでした
展覧会にはアンディ・ウォーホルや、ロイ・リキテンスタインらのアメリカン・ポップ・アートの巨匠たちと、ロバート・ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズらの先駆者たちの代表作が選ばれています。
今週は、来日作品の中からジャスパー・ジョーンズの「地図」という作品をご紹介しましょう。
ジャスパー・ジョーンズ「地図」1965年
この一見真っ黒に塗りつぶされた作品に描かれているのは、アラスカとハワイを除くアメリカ合衆国48州の地図です。
ジョーンズは「地図」という二次元のイメージを選び取ることによって絵画からイリュージョンを排除しましたが、それは絵画の在り様をそれまでの芸術とは全く異なる方向に導くものでした。
なぜなら、風景や人物を描いた絵では、画面に描かれたものは現実の風景や人物そのものではなく、あくまでも絵画が生み出すイリュージョンであるのに対し、「地図」は地図の絵であると同時に、地図そのものでもあるからです。
「地図」をモチーフにした作品は、そのサイズや色調、筆触を変え、あるいは文字を導入するなど、様々なバリエーションが制作されました。
ジャスパー・ジョーンズ「地図」1961年
※展覧会には出ていません
出展作品は、ほぼ黒一色に塗られていますが、大部分は木炭で描かれ、州名も薄っすらと読み取ることができます。
「地図」左上部分
※中央上部にMONTANAやIDAHOなどの文字がうっすらと見えます
ところが、カンヴァスの右下の4分の1には油彩が用いられ、ステンシルによる州名は塗りつぶされたように見えます。
「地図」右下部分
この右下の部分は、ジョーンズの出身地であるジョージア州を含む人種差別が根深い地域とも重なっています。
ジョーンズの作品は60年代に入るとどこか不安げで重苦しい雰囲気に包まれていますが、ここでも真っ黒な画面は暗く荒涼としています。
「地図」のモチーフは、アメリカを象徴する記号です。
60年代のアメリカは、黒人に対する人種差別の撤廃を求めた公民権運動の高まりや、ケネディ大領領や黒人指導者キング牧師の相次ぐ暗殺、ベトナム戦争への本格介入など、大きな社会的、政治的変動を体験しました。
そうした当時の社会的、政治的状況が、このようにジョーンズの作風に少ながらず影響を与えたと考えられています。





