雑話184「ダ・ヴィンチ展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話184「ダ・ヴィンチ展」

現在、東京都美術館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展-天才の肖像」に行ってきました。


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東京都美術館正面

本展では、レオナルド自身による油彩画、素描、手稿(手書きの原稿)が一堂に集められ、彼の作品の魅力とその思考の過程を見ることができます。


また、レオナルドの追従者たちによる数々の油彩画や素描、レオナルドにゆかりの書籍も展示されていて、多分野にわたるレオナルドの偉大な影響が分るようになっています。


芸術家、科学者、発明家と多才な顔を持つ天才レオナルドの知られざる新たな一面が明らかにされることでしょう。


第1章「アンブロジアーナ図書館・絵画館」では、細部まで丁寧に描かれた女性の横顔に惹かれました。


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ロンバルディア地方のレオナルド派の画家「貴婦人の肖像」1490年頃

かつてレオナルドの作と考えられていた本作品は、様々な仮説が立てられましたが、現在ではレオナルドの周辺の画家によるものとされています。


この貴婦人の繊細なプロフィール(横顔)、ヘアネットを留めているサテンのリボンや真珠の表面にみられる光の正確な描写、影の注意深い配置などがレオナルドの教えだと考えられています。


第2章「レオナルド 思考の迷宮」では、レオナルドがまだ駆け出しの芸術家だった1478年頃のものから、1519年に亡くなる直前までの素描や覚書が含まれる「アトランティコ手稿」が展示されています。


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レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子

「頭部の素描、作品リスト、アタランテ・ミリオロッティの肖像に関する言及」1482-83年頃

この「アトランティコ手稿」はレオナルドの幅広い関心を示しています。


本展に出品された22枚の手稿においても、遠近法や光学、幾何学といった絵画に密接にかかわる分野の研究のほか、建築や軍事施設、飛行機械などについての多様なアイディアが展開されています。


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レオナルド・ダ・ヴィンチ「複数の弩(いしゆみ)を装備した歯車の素描」1485-87年

※レオナルドの構想した、矢を素早く、かつ連続して発射することのできる兵器

第3章「レオナルドとレオナルデスキ」では、本展最大の注目作品である「音楽家の肖像」を中心に、レオナルデスキ(レオナルドの弟子)の絵画によって、彼らの高い芸術性と特異性を見ることができます。


「音楽家の肖像」に関しても、長い間、誰の作品であるかという帰属問題が続いていましたが、20世紀後半になってようやくレオナルドの作品であることが認められるようになりました。


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レオナルド・ダ・ヴィンチ「音楽家の肖像」1485年頃

深く内省的な洞察力によって、描かれた人物が持つ精神性-レオナルドが「魂の動き」と呼ぶもの-までとらえる力は、まさに本作品の創り手にこそ備わっている資質です。


また顔の筋肉に見られる解剖学的な描写は、その後の解剖学的な素描によって示される人体の科学的な探究を予告しています。


この作品の保存状態は一様ではなく、顔とそのまわりの巻き毛のあたりは完璧ですが、暗い背景部分全体と、帽子と長髪の左側部分には加筆が認められます。


1905年の修復では、塗りつぶされていた紙を持つ手が現れました。ストールの部分には大雑把な筆触が認められますが、除去されていない過去の描き直しとも、未完成によるものとも言われています。


「レオナルド・ダ・ヴィンチ展-天才の肖像」は今月の30日まで開かれています。その後の巡回の予定はないようですので、ご興味のおありの方はお急ぎください。