雑話173「ラファエロ展」
現在、東京上野の国立西洋美術館で開催中の「ラファエロ展」に行ってきました。
国立西洋美術館前
ラファエロは、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロとともにルネサンスを代表する画家のひとりです。
優美かつ完璧とされた彼の作品は、ヨーロッパ美術において、19世紀半ばまで画家にとっての絶対的な手本とされ、近現代の芸術家たちにまで大きな影響を与えてきました。
この展覧会は、4部構成になっており、初期の作品、フィレンツェ時代、ローマ時代、最後に弟子たちの作品や彼の作品をもとにした版画や工芸品が展示されています。
まず会場の入り口で、最初に出迎えてくれるのが、ラファエロの自画像です。
ラファエロ・サンツィオ「自画像」1504-06年
21~23歳の頃の作品ですが、ルネサンスの巨匠とは思えないほど華奢でちょっと頼りない感じがします。長髪で長いひげを生やし、気難しい顔のダ・ヴィンチの自画像とは好対照です。
当時のラファエロは、故郷ウルビーノで工房の親方として既に有名でしたが、更なる向上を目指してフィレンツェに出てきたところでした。後半に出てくる晩年の自画像と比べてみると面白いかもしれませんね。
さて、初期の作品が集められた第1部のなかで、ラファエロらしい作品を見つけました。「聖セバスティアヌス」という絵画です。
ラファエロ・サンツィオ「聖セバスティアヌス」1501-02年頃
これを描いたのはフィレンツェに出る前ですが、彼の類まれな仕上がりと明暗を描き分ける驚くべき技量が発揮されています。お蔭でラファエロ特有の非現実的な容貌も、大気の柔らかさのなかにうまく溶け込んでいます。
第2部のフィレンツェ時代では、展覧会の最大の目玉である「大公の聖母」の前に人だかりができていました。
ラファエロ・サンツィオ「大公の聖母」1505-06年
作品の題名は、この絵を所有していたトスカーナ大公のフェルディナンド3世に由来しています。
暗闇のなかに浮かび上がる、幼いキリストを抱いたマリアの静かな佇まいは、まさに聖母という名前の通り神聖な存在そのものです。ウルビーノ時代の様式を依拠していますが、繊細な明暗法にはダ・ヴィンチの影響がみられます。
この真っ黒に塗られた背景、それほど違和感もありませんが、実はラファエロの手によるものではなく、傷んだ背景を隠すために後世に塗られたものなのです。元の背景には、室内の様子と窓から望む屋外風景画描かれていたことが分かっています。
同じ第2部には、ダ・ヴィンチの影響がより際立っている「無口な女(ラ・ムータ)」も見ることができます。
ラファエロ・サンツィオ「無口な女(ラ・ムータ)」1505-07年
ラファエロの芸術は”前世代・同時代の芸術家たちから最良の部分を引き出した”といわれています。なかでも、同時代のダ・ヴィンチの作品の影響を、多くの点で見ることができます。
「無口な女」には、以前には見られない顔貌表現や空間表現がみられます。ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」のように、軽く斜めになった姿勢をとり、頭は鑑賞者の側に向けています。右腕は胸の前を斜めに横切り、体の正面に作られた奥行きを強調しています。
第3部の最後の方に、晩年の自画像である「友人のいる自画像」が展示されています。晩年といっても、亡くなったのが若干37歳なのですが、友人の肩に手をおくラファエロの姿は、冒頭の自画像と比べるとずいぶん落ち着いて見えます。
ラファエロ・サンツィオ「友人のいる自画像」1518-20年頃
この謎めいた二重肖像画は様々な解釈がされており、例えば画中のラファエロは芸術的着想の擬人像であり、自らの構想の実現の大半を助手に委ねた晩年の製作工程に言及した芸術理論の絵画化という説があります。
ほかにもヴァチカン宮のフレスコ画「アテナイの学堂」の版画など有名な作品をもとにした作品も多数あり、誰もが知ってるラファエロの展覧会を見たという充実感も味わえます。
毎年数多くの有名な芸術家の展覧会が行われているなかで、意外にもラファエロの個展は今回が初めてとのことです。それだけ来日が難しい作品といえますので、ご興味のおありの方は是非ご覧になってください。
「ラファエロ」展は2013年6月2日まで開催しています。





