雑話155「ジョルジュ・ド・ラトゥールの聖ヨセフの夢」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話155「ジョルジュ・ド・ラトゥールの聖ヨセフの夢」

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールをご存知の方は、かなりの美術通でしょう。


ルーブル美術館にある「大工の聖ヨセフ」は、さまざまな美術関係のメディアに出ていますので、見たことがある人は多いかもしれません。


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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「大工の聖ヨセフ」1640年頃

ラ・トゥールは17世紀のフランスで活躍した画家です。彼の名は一時期、美術界から完全に忘れ去られていましたが、20世紀初頭になって再発見されました。


彼の絵はとてもシンプルです。それらは大抵小振りで、変化にも富んでいません。登場するのは、ほとんどの場合、少人数の人物だけです。


風景はなく、空や海もまったく示されることがなく、自然は何も存在しません。動物もほとんど登場せず、種類も限られていますが、どれもとても美しく描かれています。


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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「犬を連れたヴィエル弾き」の犬

ラ・トゥールはただ、昼の光で生き生きと彩色された、またはその反対に、蝋燭の光によって照らし出された暗闇のなかに半ば溶け込んだ人物を描くことに終始しているのです。


しかし、彼の絵に内容のないものは一つとしてありません。だから、ひとりの老人の質素な肖像にも、彼の人生のすべてが含まれるのです。


さて今回は、そんなラ・トゥールの作品のなかから、もっとも完成度が高く、感動的な作品とされる「聖ヨセフの夢」をご紹介しましょう。


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ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「聖ヨセフの夢」1640年頃

ここでは、眠っている老人を若い女性が起こそうとしているようです。しかし、これは聖マリアの夫であるヨセフへの「受胎告知」だとされているのです。


聖母となるマリアと婚約していたヨセフは、彼女が妊娠していることを知って、ひそかに縁を切ろうとします。すると、天使が現れ、精霊によって妊娠したマリアを受け入れ、生まれてくる男の子をイエスと名づけるようにいうのです。


すでに歳をとっていた大工のヨセフが聖書を読みながらまどろんでいるところに、天使が現れます。その光に照らされた横顔は女性でも若者でもなく、単に神に使わされた者なのです。


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天使の横顔の部分

その刺繍の施された帯は、まるで真珠や貴石が撒かれたかのように垂れ落ち、そしてその大きな動作は、老人の無気力を示すようなぐったりとした大きな量塊に天の真理を対峙させます。


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天使の帯の部分

彼は、すべての宗教を超え、啓示をもたらす、本質的な存在なのです。


この作品に特徴的な蝋燭の照明は、単に絵画的な効果を狙ったという以上のものがあります。


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天使とヨセフのアップ

対峙するように描かれたふたつの存在は、希望に満ちた子供と運命を甘受する老人の対比でもあります。


少年でも少女でもなく、現実のものとも非現実のものともつかない天使は、空想的な衣装をまとう姿で描かれ、その確かな存在感が、言葉では言い尽くせない詩情を作品に与えているのです。