雑話153「エル・グレコ展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話153「エル・グレコ展」

大阪、中之島にある国立国際美術館で開催中の「エル・グレコ展」に行ってきました。


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国立国際美術館正面入口

エル・グレコは16世紀から17世紀にかけて活躍したスペインの画家で、ベラスケス、ゴヤと合わせてスペインの3大画家といわれています。


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エル・グレコ「芸術家の自画像」1595年頃

エル・グレコという名は通称で、本名はドメニコス・テオトコプーロスといいます。エル・グレコとはギリシャ人という意味で、彼がギリシャのクレタ島出身だったのでそう呼ばれたのでしょう。


暗く重苦しい作品が多い同時代のなかで、まるで劇画のような彼の絵は、現代人にとって受け入れやすい作風です。


そんな現実の色や形を無視したエル・グレコの芸術が目指したのは、技術的な完成ではなく、見るものの心を揺さぶる劇的なヴィジョンでした。


「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」は、エル・グレコが最晩年に描いた肖像画の傑作です。


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エル・グレコ「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」1611年

絵の前に立つと、モデルの目線は見ている我々の目線と合っていて、まるで向かいに座った観者と会話をしているようです。


人物の正確な描写を何より優先した当時の肖像画に対して、エル・グレコの肖像画はモデルの生き生きとした生命感が、動きに満ちたイメージから立ち上がっています。


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修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの手の部分

それは衣服のひだ、手のジェスチュア、首のひねり、顔の左右非対称な形、そしてそれらを作り出す自由で動きに満ちた筆致から生まれているのです。


「聖ラウレンティウスの前に現れる聖母」では、中央の聖人が着ている衣装の鮮やかさに目を奪われます。


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エル・グレコ「聖ラウレンティウスの前に現れる聖母」1578-81年頃

これは「ダルマチカ」という助祭が着る祭服ですが、そのオレンジと白の曲線による浮き出し刺繍や赤い縁飾り房の描写から、その手触りまでが伝わってくるようです。


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聖ラウレンティウスの祭服の刺繍部分

「フェリペ2世の栄光」の劇的な効果を見れば、エル・グレコの絵が人気だったわけがよく分かります


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エル・グレコ「フェリペ2世の栄光」1579-82年頃

ここでは、激しい明暗法だけでなく、大胆な上昇表現や複雑な構図、誇張された遠近法などによって迫力の画面が生み出されています。


多くの人物が登場する様々な場面が描かれていますが、この作品がどのような意図で描かれたかはよく分かっていません。


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「フェリペ2世の栄光」の中のフェリペ2世(中央)

ただ、中央下の黒い服を着た人物がスペインの王であるフェリペ2世であり、その彼が神の審判を見ていることだけが読み取ることができます。


最後は、この展覧会のポスターにもなっている「無原罪のお宿り」です。


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エル・グレコ「無原罪のお宿り」1607-13年

この作品は、もともとトレドのサン・ビセンテ聖堂にある礼拝堂の装飾として描かれました。


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蛇状に曲がりくねったマリア

巨大なサイズ(高さが3.5m近くあります!)に加えて、エル・グレコが美の要素と考えた性質、つまり上昇性、様式化、構図の複雑さ、短縮法、そして蛇状人体などが総動員されていて、そのダイナミックな画面は見るものを圧倒します。


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極端な短縮法で描かれた天使

これほどの迫力をもって表現することは、厳密で正確なデッサンにこだわっていてはできるはずがありません。


エル・グレコが、単に劇画調の、不自然に引き伸ばされた人体をえがく宗教画家だと思っていた方には、眼からうろこの展覧会となることでしょう。


「エル・グレコ展」は12月24日まで大阪で開かれたあと、東京、上野の東京都美術館にて、来年1月19日から4月7日まで開催される予定です。


国内史上最大級の「エル・グレコ展」を是非お見逃しなく!