雑話138「モネの描いたロンドン」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話138「モネの描いたロンドン」

今年の注目イベントの一つ、ロンドンオリンピックが始まりました。熱心に応援するあまり、寝不足気味の皆さんも多いのではないでしょうか?


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さて、そのロンドンを描いた印象派の画家としてもっとも有名なのは、国会議事堂などの連作を描いたモネでしょう。


1899年から1901年の間に、モネは3回ロンドンに旅行し、その都市風景を描きました。ロンドン風景は20年以上も挑戦していなかった都会的な情景への回帰でした。


ここでモネが取り上げた主要な建築的モティーフは国会議事堂ですが、この時期の絵画はそれ以前に描かれたパリの景観とは異なっています。


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クロード・モネ「国会議事堂、霧の効果」1903年

そこには、主題としての都市の近代性の感覚はありません。遠方から視点をとり、テムズ河とそこに架かる橋、そして国会議事堂とを描き出したこれらの情景は、燃えるように赤く輝き、霧に厚く覆われ、まるで亡霊のようなロンドンの姿を示しています。


ロンドンの連作は、有名な積み藁やルーアン大聖堂を描いた連作シリーズの一つです。ロンドンを選んだ理由として、モネはロンドンの霧を挙げています。


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クロード・モネ「国会議事堂、霧の中の陽光の効果」1904年

モネは「霧がなければ、ロンドンは美しい町とはいえないだろう。この街に不思議な拡がりを与えているのは霧なのだ。霧というこの神秘的な外套をまとっているおかげで、町のどっしりした規則的な建物が崇高なおもむきを帯びるのだ」と語っています。


実際、当時のロンドンには、ナイフで切れるほど濃い「包み」があり、建物のぼんやりした輪郭だけを見せて他のすべてを覆っていました。


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クロード・モネ「国会議事堂、テムズ河への反映」1905年

国会議事堂の建築家たちが良く心得ていたように、ヴィクトリア朝ゴシックそのものの、大釘を立ち並べたような中世趣味の建物は、濃い霧のヴェールに包み込まれ、いくつもの尖塔が、あたかも幽霊船のマストのように靄の中からあらわれるときに、もっとも見事に見えたのです。


しかし、現在では、かつての「豆のスープ」のような分厚い霧のもたらす効果を想像することは難しくなっています。


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現在の国会議事堂

1950年代に暖炉への石炭の使用が廃止され、その結果ロンドンの空気がきれいになって以来、冬の大気の状態は大幅に変わりました。今ではモネの時代に比べて12月の日照値が70%も上がっているのです。


大気が綺麗になったことは喜ばしいことですが、モネが絶賛した「霧に包まれた神秘的なロンドン」を一度は見てみたかったと思いませんか?