雑話137「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話137「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」

現在、国立西洋美術館で開催中の「ベルリン国立美術館展」に行ってきました。


絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話-国立西洋美術館入口

国立西洋美術館正門

ベルリン国立美術館とは、正確にはベルリン国立美術館群のことで、ベルリン市内にある15の美術館・博物館の総称です。


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ベルリン国立美術館群の一つ、ボーデ博物館

今回のコレクションは、その内のベルリン国立絵画館、ベルリン美術館彫刻コレクション、ベルリン国立素描版画館から出品されています。


ルネサンスからロココの時代までの、イタリアと北方ヨーロッパの作家の作品を集めた企画ですが、日本人にとっておなじみの芸術家の作品は少なめです。


それでは、今回も個人的に気になった作品を取り上げていきます。


まず最初は、穏かな表情の女性の彫刻をご紹介しましょう。


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グレゴリオ・ディ・ロンツォ「女性の肖像」1470年頃

グレゴリオ・ディ・ロンツォというイタリア・ルネサンスの彫刻家の作品です。引き伸ばされた首、強い正面性、眉・鼻・口の明快な輪郭が特徴の整った横顔は、作者の理想美を体現しています。


低い台座が設えられた胸像は、イタリア・ルネサンスに典型的なもので、モデルとなった女性の純潔と貞操を讃えています。


次は、同じ肖像画のセクションの最後にある、可愛らしい女性像です。


これは、アントウェルペン(現在のアントワープ)の画家、ヤン・サンデルス・ファン・ヘメッセンの「金貨を量る若い女性」という作品です。


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ヤン・サンデルス・ファン・ヘメッセン「金貨を量る若い女性」1530年頃

毛皮や袖口の質感はとても見事ですが、豪華な衣装を着た女性が金貨を量っているというセッティングは、現代なら成金趣味のようで、肖像画としてはあまりいいイメージを与えないでしょう。


しかし、この成功した商人の娘であろう女性は、実際に貨幣の勘定や目方を量ったりする仕事と結びついていたと思われ、彼女が右手に持つ天秤は、この女性の公正で安定した性格を示しています。


17世紀:絵画の黄金時代のコーナーでは、見事な内面描写の作品が隣同士に並んでいます。


ナポリ派の画家で、1700年前後のヨーロッパでもっとも有名かつ影響力のあった画家の一人であるルーカ・ジョルダーノの初期の作品です。


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ルーカ・ジョルダーノ「エウクレイデス」1650-1659年頃

このころのルーカは、カラヴァッジョに強い影響を受けた絵を描いており、これらの作品でもカラヴァッジョのように強い明暗の効果が見られます。


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ルーカ・ジョルダーノ「アルキメデス」1650-1653年頃

また、この2作品は古代の数学者と哲学者を描いた肖像画の連作の一部と考えられていますが、彼らは二人の成功した著名な人物として描かれているのではなく、世界から孤立した禁欲的な老人として描かれていて、そのこともカラヴァッジョ的な特徴の一つです。


最後はやはり、今展の最大の注目作品であるフェルメールの「真珠の首飾りの少女」を取り上げましょう。


フェルメールは日常生活に内在する調和を、主に閉ざされた個室に見出しました。その室内世界の中では、椅子やテーブル、壁、窓枠まで、個々の物体は自然に内在する秩序の感覚を作り出す道具に使われています。


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ヨハネス・フェルメール「真珠の首飾りの少女」1662-1665年頃

慎重に選ばれた物体は、一つとしていい加減に置かれてはいません。その位置や大きさ、色彩、質感は、描かれた人物像と調和して効果を上げていて、光が画面を横切り、これらの要素を結び付けているのです。


フェルメールの多くの作品と同様、ここでも日常生活の途中で物思いにふける女性像に焦点を向けています。目は外に向けながら心の内をのぞいているような、そうした静かな黙想の一瞬に、フェルメールは人の精神的な本質を覗く窓を見いだしたのです。


今回取り上げなかった作品の中にも、興味深い作品が数多くありました。特に日本では、あまり紹介されることのないこの時代の彫刻作品には、珍しいものもいくつか見られました。点数が多い展覧会ですので、時間があるときにゆっくりご覧になることをお薦めします。


〔東京展〕

国立西洋美術館 2012年6月13日~9月17日


〔福岡展〕

九州国立博物館 2012年10月9日~12月2日