雑話133「大エルミタージュ美術館展」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話133「大エルミタージュ美術館展」

現在、国立新美術館で開催中の「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」にいってきました。


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この展覧会ではエルミタージュ美術館が誇る多くの所蔵作品の中から、16世紀から20世紀に活躍したヨーロッパ各地の巨匠たちの作品を年代順に展示しています。


今回も、そのなかで個人的に気になった作品をご紹介していきましょう。


イタリアン・ルネサンスの間を抜けると、格式高い美術館という空間に違和感をおぼえる絵が目に飛び込んできます。


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ペーテル・パウル・リュベンス「ローマの慈愛(キモンとペロ)」1612年頃

バロック美術の巨匠、リュベンスの「ローマの慈愛(キモンとペロ)」です。後ろで手を縛られた全裸の男が、口を尖らせて胸をはだけた若い女の乳首を吸おうとしています。


リュベンスともあろう大画家がこんな破廉恥な絵を描くなんて、と思われるかもしれませんが、実はこのテーマは西欧美術において何度も描かれた定番の一つなのです。


投獄され餓死の刑を宣告された父親をすくうために、乳児を持つ娘が自分の乳を与えるという古代の話は、キリスト教的慈愛のテーマに相応するものとして扱われています。


ここでもリュベンス得意の描法が存分に発揮され、飢えてやせ細っているはずの老いた父親は、筋肉質の見事な肉体をあらわにし、娘のみずみずしい肌は輝くように描かれています。


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レンブラント・ファン・レイン「老婦人の肖像」1654年

同じバロックの部屋には、日本でも人気のレンブラントの「老婦人の肖像」も展示されています。


内面描写を得意としたレンブラントの作品らしく、老女の陰鬱で悲しげな様子が、ゆったりとした派手さのない筆づかいや、光と影の巧みな扱いを通して静かに伝わってきます。


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クロード=ジョセフ・ヴェルネ「パレルモ港の入り口、月夜」1769年

次の18世紀の間では、雄大でロマンティックな風景画に惹かれました。


18世紀のフランスを代表する風景画家の一人であるヴェルネの「パレルモ港の入り口、月夜」には美しく描かれた夜の海景の中に、光と影の驚くべき戯れを見いだすことができます。


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ユベール・ロベール「古代ローマの公衆浴場跡」1798年

隣には古代ローマ遺跡や廃墟を好んで描いたロベールの「古代ローマの公衆浴場跡」が並んでいます。


ロベールは線遠近法や空気遠近法を駆使して風景に壮大さを与えると同時に、光と影の効果を巧みに使って遺跡に神聖な雰囲気を醸しだしています。


19世紀の間も悪くはないのですが、最後の注目作品としては次の20世紀の間にあり、この展覧会の目玉作品でもあるマティスの「赤い部屋(赤のハーモニー)を取り上げましょう。


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アンリ・マティス「赤い部屋(赤のハーモニー)」1908年

高さ180cm、幅220cmの巨大なキャンバスのほとんどを真っ赤に塗られたこの作品の迫力は、実際に目の前にしないと伝わらないでしょう。


この作品が描かれた1908年にはすでにフォーヴ様式から離れ、明るい色彩による幅広い表面や豊かなアラベスクや単純化された平坦なフォルムを特徴とする「装飾的」な作風に変わっています。


マティスがこの頃目指したのは「均衡と純粋さと静謐の芸術であり、肉体の疲れをいやす良いひじ掛け椅子に匹敵する何かであるような芸術」でした。


強烈な赤は、疲れをいやすひじ掛け椅子のような芸術には刺激が強すぎるような気もしますが、もともと青で塗られていたキャンバスを赤に塗りなおしたマティスによると、青い画面では装飾性が不足していたそうです。


ご紹介できなかったなかにも、まだまだ注目すべき作品がたくさんあり、たいへん見応えのある展覧会です。お時間の許される方は是非一度ご覧になってください。

なお、東京の後は、名古屋、京都を巡回予定です。


「大エルミタージュ美術館展」

世紀の顔・西欧絵画の400年


■東京展

2012年4月25日~7月16日

国立新美術館


■名古屋展

2012年7月28日~9月30日

名古屋市美術館


■京都展

2012年10月10日~12月6日

京都市美術館