雑話132「浮世絵・・・ジャポニスムの頂点」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話132「浮世絵・・・ジャポニスムの頂点」

以前にも書きましたが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて西洋美術における日本美術の一連の影響はジャポニスムと呼ばれました。


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ジークフリート・ビング発行・合本「芸術の日本」1888-91年

※1888年5月号から1891年4月号にわたり刊行された日本美術を紹介した雑誌

ジャポニスムをもたらした日本美術の中でも、ひときわ大きな注目を集めたのが浮世絵です。


とくに葛飾北斎と歌川広重は圧倒的な賞賛の的となり、フランスでは日本を代表する大画家としての評価を得たのでした。


さて、北斎も広重も我々日本人にとってなじみ深い作家で、彼らの作品を目にすることも多いのですが、詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?


ともに代表作は風景版画ですが、彼らに限らず当時多くの浮世絵師が風景画を制作しました。


共通しているのは、純粋な風景画は少なく、人物との調和を念頭においた作品が多いということです。


次に、それぞれの特徴を見てみましょう。まず、北斎の風景のもっとも顕著な特徴としては、奇抜な構図があげられるでしょう。


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葛飾北斎「富岳三十六景 神奈川沖浪裏」1831年頃

例えば、代表作の「富岳三十六景 神奈川沖浪裏」では、巨大な波が房総から鮮魚を運ぶ押送舟に襲いかかります。


こんな大波に襲われたら、小舟はひとたまりもなく転覆するでしょう。このように現実にはありえない情景だけに、大波のはるか向こうに泰然と座す富士の偉大さがいっそう感じられるのです。


一方、広重の作品に共通して見られるのは、日本の古来伝統的な雪月花の風情です。広重の描き出す山水や花鳥には余情が重んじられ、すべての作品は鑑賞者による穏かな感情移入を容易にする文学的な情趣が横溢しています。


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歌川広重「東海道五十三次 蒲原」1833-1836年頃

広重の代表作「東海道五十三次 蒲原」では、モノトーンに色調を抑えたことにより、雪の夜の静けさがみごとに描かれています。3人の旅人が雪の上を歩く足音まで聞こえてきそうです。


これらの浮世絵は芸術家に新たなアイディアを与えただけでなく、収集の対象にもなったようです。広重の模写までしているゴッホは500枚、自宅に多数の浮世絵をかけていたモネはなんと2500枚以上のコレクションを持っていたようです。


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ジヴェルニーの自宅にて食堂に飾った浮世絵のコレクションの前に立つモネ、1915年頃

ヨーロッパの芸術家の目から見ても、浮世絵は単に物珍しいだけでなく、素晴らしい芸術作品だったことがわかりますね。