雑話123「作品の楽しみ方・・・背景を知る」 | 絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話

雑話123「作品の楽しみ方・・・背景を知る」

これは「キャンベル・スープ」という芸術作品です。


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アンディ・ウォーホル「キャンベル・スープ缶」1964年

一見すると、単なる商品広告のポスターのようにしか見えません。しかし、この作品はアメリカンポップアートのスーパースター、アンディ・ウォーホルの代表作なのです。


ここに描かれたのはアメリカのスーパーマーケットならどこにでも見かけるキャンベル社製のスープ缶です。しかも、何も手を加えずに、まったく見たままに描かれています。


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現在のキャンベルの缶入りスープの写真

単なる日用雑貨をそのまま描いたようなものを芸術作品といわれても、違和感がある方が多いでしょう。しかし、ここで注意すべきなのはアメリカ人にとってキャンベル・スープ缶は単なる日用雑貨ではないということです。


この商品のラベルはなんと1898年以来不変だといわれています。1世紀以上前から親しんできたキャンベル・スープに対して、アメリカ人は日用雑貨以上のさまざまな思いを抱いていることででしょう。


それまで誰も描こうとしなかった大量生産された製品の中に、アメリカ人にとって特別な思いを見出したからこそ、この作品が高く評価されたのではないでしょうか?


そう思ってこの作品を見てみると、単なるレトロ調の宣伝ポスターのようにしか見えなかったものの中に、アメリカ人が古き良きアメリカに抱いているであろう色々な思いが見えてくるような気がします。


では、もう一つ、別の作品を見てみましょう。シャガールの挿画本である「オデュッセイア」の版画は日本でも大変人気の高い作品です。


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マルク・シャガール「地獄で」(オデュッセイアⅡより)1975年

前史の物語である「オデュッセイア」の登場人物たちは、シャガール独特のタッチで色鮮やかに描かれていて、とても美しく仕上げられています。


しかし、絵の題材である「オデュッセイア」について知っている人がどれだけいるでしょう。実は、この作品が制作されたヨーロッパの人たちにとって「オデュッセイア」とは単なる神話以上の存在なのです。


「オデュッセイア」の作者とされているホメロスは、ヨーロッパでは史上最高の文学者の一人とされ、その代表作である「イリアス」と「オデュッセイア」は太古の昔から現在に至るまで多くの人々に親しまれてきました。


古代ギリシャではホメロスの作品は人生の糧であると考えられていて、社交界ではホメロスについての知識は常識でした。


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ギリシャのアッティカ赤像式陶器に描かれた「オデュッセイアとセイレン」

紀元前500-480

19世紀になっても、ホメロスは賞賛の対象であり続け、フランスの作家シャトーブリアンは、ホメロスのような天才たちが人間の歴史を豊かにしているとしており、また人気小説の主人公アルセーヌ・ルパンもホメロスの作品をすべて暗誦できるといっています。


現代の芸術家たちもホメロスの作品からインスピレーションを受けて作品を制作しており、絵画作品はもちろん、映画でもストーリーに登場するトロイア戦争のさまざまなエピソードが映像化されています。


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映画「トロイ」でアキレウスを演じるブラッド・ピット(2004年)

ですから、ヨーロッパの愛好家は太古のロマンを思い浮かべながら、シャガールの版画を楽しんでいるわけです。実際、版画の元となった物語を知れば、版画に描かれた断片的なシーンだけでは分からなかったものが見えてきて、その版画自体の更なる理解につながり、結果としてその作品をもっと楽しめることになるでしょう。


このように、自分の好きな作品の描かれた背景を調べてみると、単に作品から受ける印象以上の何か面白い発見があるかもしれません。是非一度お試しあれ!