雑話108「”印象・日の出”・・・印象派の原点」
新年明けましておめでとうございます。
今週はお正月らしく、初日の出に因んで、モネの「印象・日の出」についてお話しましょう。
クロード・モネ「印象、日の出」1972年
以前にも書きましたが、印象派の名前はこの作品から名付けられました。
但し、このネーミングはこの作品が彼らのグループを代表する素晴らしい作品だからという理由ではなく、彼らの示した新しい技法を中傷する意図で付けられたのです。
さて、この題名、もともとは単に「日の出」だったようです。ところが、第1回印象派展に出品されることになり、そのカタログの編集をしていたルノワールの弟のエドモンが、あまりに単調なモネのネーミングに注文をつけました。
そこで、モネは題名に”印象”と付加えるように指示したと伝えられています。つまり、エドモンがモネのネーミングに異議を唱えなければ、有名な印象派は別の名前で呼ばれていたかもしれないのです。
しかし、モネが腹立ち紛れにつけた、この「印象」という名前は決してその場限りの思いつきではありませんでした。
クロード・モネ「靄のなかのヴェトゥイユ」1879年
※「印象、日の出」と同様に、この作品も主題の記録ではなく、ある雰囲気の喚起を目的としています
モネにはある特別なタイプの場面を描いた作品があり、これらを「印象」としていたようです。このタイプの作品はすべて同じような靄がかった光、その中でものの形態が溶けて消え去ってしまうような光を共有しています。
この「印象・日の出」にもはっきりと見えるものは何もありません。風景のなかの主な目印は靄でぼやけ、画面に君臨しているのは、ひんやりと湿った霧のとばりの灰色を背景にした深紅の丸い太陽です。
「印象、日の出」の一部
画家の関心は港という場所の様子ではなく、空気の色にあります。ここではすべてが混ざり合い、水平線は陽光に染まった靄の奥に消えていきます。
光の変化の効果をとらえる能力は、続く50年以上ものあいだ、モネにとってますますその重要性を増していきます。
そして、この独特の作品は、その題名のためだけでなく、後年のモネの作品がここから孵化しつつあると思えるその手法の点でも、印象派の象徴となったのです。