雑話89「渦巻きの画家・・・フンデルトヴァッサー」
今週は印象派の時代から離れ、われわれに近い時代の作家をご紹介しましょう。
画家であり、建築家でもあったフンデルトヴァッサーは、前々回このブログでご紹介しましたクリムトと同じオーストリアのウィーン出身です。
フリートリッヒ・フンデルトヴァッサー「ギリシャの最後」1963-64年
彼の絵の特徴は、なんといってもその渦を巻くしま模様です。鮮やかな色で描かれた渦巻きは有機体のようであり、また理科の実験で見た細胞の断面図のようでもあります。
そんな原色の渦巻きは、彼が「すべての色のうちで最良の色」であるとしていた黒を背景に描かれることで、どこか哀しげで、不思議な迷路の世界へ観るものを誘い込みます。
フリートリッヒ・フンデルトヴァッサー「ギリシャ人の最後」1964年
フンデルトヴァッサーは、”幼い頃から渦巻きを描くのが好きだった”そうですが、彼の絵にはっきりとこの渦巻きが登場するのは本格的に絵の勉強を始めてから5年後の1953年、彼が25歳のころでした。
その頃から彼の”直線”に対する攻撃が始まりましたが、彼にとって直線とは非人間的であり、合理主義者の全体主義が押しつける侮辱的な画一性と醜悪さの横暴の象徴でした。
フリートフィッヒ・フンデルトヴァッサー「波長」1979年
渦巻きは、そんな機能主義の合理的な支配から逃れ、個人の創造性や自分らしさを手に入れるために、自然の循環の有機的に統合された完全性に対する尊敬を表しています。
また、フンデルトヴァッサーによると、人間は5つの皮膚をもっていて、それは以下の通りです。
1番目の皮膚: 自分の皮膚
2番目の皮膚: 衣類
3番目の皮膚: 住まい
4番目の皮膚: 社会環境と素性
5番目の皮膚: 地球環境-生態学と人類
この場合の皮膚とは、自分の外側にあって自分を取り巻いているもののことですが、フンデルトヴァッサーは特に3番目の皮膚である”住まい”に対して、絵画のみならず建築という形でも取り組んでいます。
フンデルトヴァッサー・ハウス
彼が建築家として取り組んだフンデルトヴァッサー・ハウスはまさに彼の仕事の集大成です。直線を極力用いずに建てられたこのユニークな建築物は、柔らかい線がつらなり、ウィーンの古風な街の中で突拍子もない色彩を放ちながら、どこかナイーヴで暖かい感触があります。
フンデルトヴァッサー・ハウス
このメルヘンチックは集合住宅はウィーンまで行かなければ見られませんが、実は日本でも彼の建築物を見ることができます。
大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの対岸にUSJのアトラクション施設と見間違うような奇抜な建物がそびえ立っています。これは、フンデルトヴァッサーがデザインした大阪市のゴミ焼却施設です。
大阪市環境局舞洲工場
海沿いの工業地帯にありますので、これだけを見にわざわざ行くのは抵抗があるかもしれません。ただ、阪神高速湾岸線の神戸方面からならよく見えますので、機会があれば注意して見てみて下さい。