雑話48「ゴッホ展」
先週に引き続き、印象派関連の展覧会をご紹介します。
今回は、国立新美術館で開催中の「ゴッホ展」に行ってきました。
ゴッホ展 名古屋会場のポスター
この企画ではゴッホがどのように彼の絵を発展させていったかを、初期の作品から順を追って展示することで紹介しています。
また、ゴッホの作品と共に、彼に影響を与えた作家の作品や参考にした文献、彼の手紙などの貴重な資料も同時に展示されていて、ゴッホが自身の芸術を発展させる上で拠り所としたものがわかるように工夫されています。
この展覧会は共にゴッホの主な作品を豊富に所蔵しているクレラー=ミュラー美術館とファン・ゴッホ美術館が企画したというだけあって、ゴッホの代表作が数多く出品されています。
中でも特に私がご紹介したい作品は、ゴッホが自分の寝室を描いた有名な「アルルの寝室」です。
フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」1888年
何の変哲もない質素な部屋を描いたものですが、ゴッホらしい極端な色使いと強調された遠近法がこの絵を特徴付けています。
正直なところ、実際に作品を見るまでは他の代表作と比べて物足りない印象がありましたが、作品を間近で見て納得することができました。
想像していたよりも大きなサイズだったという事もありますが、この作品には質素な小部屋を描いただけとは思えないほどの強烈な迫力があります。
それは、印刷物やモニター画像では伝わりませんが、絶妙に選ばれ、隣同士に組み合わされた絵の具が互いに影響しあって生み出す緊張感によるものなのでしょう。
「アルルの寝室」が再現されているコーナーもありました
※ゴッホによるとこの絵はそれを見る事でむしろ身体や心が休まるようにデザインされているとのことですが、いかがですか?
その迫力は、この「アルルの寝室」以降に展示してある作品にも同様に感じられます。
キャンバスの真ん中に椅子を一つ大きく描いただけの単純な構図や、玉ねぎや本などがテーブルに転がっている素朴な静物画など、普通の画家が描けば、退屈で平凡な絵になったことでしょう。
フィンセント・ファン・ゴッホ「タマネギの皿のある静物」1889年
しかし、ゴッホが作り出した色彩のコンビネーションによって、それらのモチーフは激しい自己主張をしており、忘れられないくらい強烈な存在感を見る者に感じさせるのです。
その迫力は展示が進み、精神を患って入院してた時期の作品から一層増していくように思われます。
特に「渓谷の小道」で多用されている、うねりのような筆遣いには鬼気迫るものがあり、迫力というよりはゴッホの怒りや苦悩と言った心の葛藤のようなものを感じさせられました。
フィンセント・ファン・ゴッホ「渓谷の小道」1889年
この「ゴッホ展」では彼の代表作を数多く間近で見ることができただけでなく、ゴッホが持つ独特の感性を肌で感じることもできました。
是非、ブログをご覧の皆さんもこの機会にゴッホの迫力ある世界を体験してみて下さい。
没後120年 ゴッホ展
Van Gogh: The adventure of becoming an artist
http://www.gogh-ten.jp/index.html
【東京会場】
国立新美術館 2010年10月1日~12月20日
【福岡会場】
九州国立博物館 2011年1月1日~2月13日
【名古屋会場】
名古屋市美術館 2011年2月22日~4月10日



