雑話44「レストラン フルネーズ」
印象派の画家達は、歴史画や寓意画を重んじたアカデミーの画家とは違い、当時の都市に暮らす人々が余暇を楽しむ様子を好んで描きました。
そんな都会の人々の楽しみの一つがボート漕ぎでした。
印象派のなかでは、カイユボットがボート好きで有名ですが、その他に作家のモーパッサンも熱心なボートマンでした。
縞のシャツを着たボートマンは、競技に汗を流したり、また女性や仲間とボートで移動して、河岸でピクニックをしたりして楽しんでいました。
ボートマンたちが休日を過ごしたセーヌ河岸に「フルネーズ」というレストランがありました。
これはボート好きの宿屋の主人が小さな持ち家に手を入れて作ったもので、レストランの他に様々なボートの貸出も行っており、一種のボート・クラブになっていました。
フルネーズのあったブージヴァルは行楽客の人気スポットのラ・グルヌイエールの近くにありました。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「アルフォンシーヌ・フルネーズの肖像」1879年
ラ・グルヌイエールは、モデルになりそうな若い女性が多く集まる場所であり、また自分の母親が近くに住んでいたこともあって、フルネーズにはルノワールがよく訪れました。
彼はフルネーズ一家とは親しくしていて、当時描いたルノワールの絵の中にはフルネーズ婦人や娘が登場しています。※上の絵は娘のアルフォンシーヌ
ルノワールの有名な「舟遊びの昼食」はこのレストランを舞台に描かれていて、登場人物は全てルノワールの親しい知人たちです。
ピエール=オーギュスト・ルノワール「舟遊びの昼食」1880~81年
その中で左手前に描かれている子犬を抱いた若い女性は、後にルノワールの妻となるアリーヌ・シャリゴです。
実はこのレストラン・フルネーズが彼らの逢引の場所でもあり、二人はよくセーヌ河岸で過ごしたようです。
ちなみにこのレストラン、今でも営業しているようです。
もし、お近くにお越しの機会がありましたら、当時のボートマンの気分でセーヌ川を見下ろしながら昼食などとられてはいかがでしょうか?


