雑話37「幻想の画家・・・シャガール」
雑話34でお伝えしましたように、19世紀後半のパリでは印象派を初めとして新しい芸術が次々に生まれ、芸術の都となると、世界中の芸術家が刺激を求めて集まってきました。
そうした中の一人が、日本でも抜群の人気を誇るマルク・シャガールです。
マルク・シャガール
恋人達や花束、牛や鳥が空中に浮かんでいる幻想的な絵画で人気のシャガールですが、その生い立ちは決して甘美なものではなく、夢心地とは程遠いものだったようです。
シャガールの生まれたのは帝政ロシアのヴィテブスクの貧しいユダヤ人街で、シャガールはそこでパリに留学するまでの大半を過ごしました。
金銭的に恵まれてはいませんでしたが、少年時代に過ごしたヴィテブスクの街の様子は死ぬまで忘れられることなく、彼の絵に何度も登場する基本的なキャラクターになるのです。
マルク・シャガール「時に岸なし」1930~1939年作
例えば、彼の絵の中では魚たちが様々な方向に飛び回っていたり、祖父の柱時計とリズムを合わせたり、翼を生やしていたりしますが、それは父親が仕事で運んでいた樽詰めの鰊なのです。
また、そうした動物たちは時には人間のようにヴァイオリンを弾いていたり、人間の花嫁を抱きしめていたりします。
こうしたキャラクターは単なる動物ではなく、何かの象徴であると言われています。
マルク・シャガール「私と村」1911年作
例えば、驢馬は頻繁に登場するキャラクターの一つですが、大抵の場合シャガール自身です。
ただ、彼がこうしたキャラクターを駆使して作り上げた画面は、何を暗示しているかが明確な場合もありますが、そのほとんどは象徴するものを明確に意図されて制作されたものではないだろうと言われています。
その反面、彼の一見子供の描いたようなイメージは、そのテクニックが幼稚なわけではなく、実はその無邪気さやプリミティブさも造形的な構造になるように計算された結果として描かれているものなのです。