雑話28「オルセー美術館展2010」②ゴーギャンと弟子たち
新印象派の作品群と並んで、今回の展覧会で特徴的なのはポール・ゴーギャンと彼の弟子たちの作品が数多く出展されている事です。
ゴーギャンは鮮やかな南国の背景の中に、浅黒い肌のタヒチの女性たちを描いた絵で有名ですが、彼の絵画はモチーフがどのように見えるかではなく、彼がモチーフに対してどのように感じたかという視点から描いているのです。
そんな彼の絵は当時の画壇には受け入れられませんでしたが、一方彼には熱心な信望者もいました。その一つがゴーギャンがフランスのブルターニュにいた時に一緒に活動したポン=タヴェン派です。
エミール・ベルナール「収穫(ブルターニュの風景)」1888年
当時のポン=タヴェンは、まだ古来の慣習や迷信が重んじられるのどかな田舎でした。近代化された社会から逃れてきたゴーギャンはそこで、後にポン=タヴェン派となる若い画家たちと宗教的な主題の実験的な作品を制作しました。
ゴーギャンの弟子として取り上げられているもう一つのグループは、ゴーギャンの指導を受けたポール・セリジエがリーダーとなって活動したナビ派の作家たちです。
ポール・セリジエ「護符、愛の森を流れるアヴェン川」1888年
この中で直接ゴーギャンと活動を共にしたのはセリジエだけですが、彼がゴーギャンの指導に従って描いた”護符、愛の森を流れるアヴェン川”が彼らの目指す方向を決定付けるほどの影響を与えました。
ピエール・ボナール「逆光の中の裸婦」1908年
ナビ派の主要な画家としては、モーリス・ドニ、エドゥアール・ヴュイヤール、ピエール・ボナール、ポール・ランソンなどがいますが、日本で最も人気のあるのは装飾的で明るい作風のボナールでしょう。