配信を観て改めて色々考えさせられています

https://jd2023.jp/news/1226a/


 

「女性へのまなざし アップデートされた脚本」

舞台を観る前に予習のため読んだ2010年発行の中島かずきさんの戯曲本。再再演にあたって時間短縮のためもありかなり手を入れたそうです。実際2023年に鑑賞して単に短くシンプルになっただけでなく、全体的に女性に敬意を持った表現にアップデートしているという印象を受けました。ジャンヌをめぐる性的な表現を減らし、また演出上もその部分をマイルドに描いたことで、よりこの物語に感情移入できたと感じています。

 

2023年版の戯曲本もブリリアで購入しました。中島かずきさんのサイン入り✨パンフも装丁が美しい上に読み応えがある!



2010年版と2023年版戯曲本を読みながら配信を観ているとまたいろんな気づきがありました。

 

「正義とは」

ジャンヌたちフランス軍の敵イングランド軍のタルボット将軍とベッドフォード公。この2人とても魅力的だった。

タルボットは男前で色気があるだけでなくジャンヌを「かわいい💛」と表現したり(ここ大阪では笑ってる人多かった!)、同胞への思いをコーション司教にぶつけたりと、とても人間味があって熱い人で。火あぶりの準備の命に一瞬ためらいを見せた後、厳かに拝命するシーン…福士誠治さんの演技やっぱりすごいわ

ベッドフォード公は部下のタルボットがジャンヌを捕らえられず苦戦していてもそれを責めることはしない理想の上司のような人望のある人。(岡田浩暉さんの熱演良かった!)

最期にジャンヌに十字架を求められて自分の十字架を外しジャンヌの首にかけてやる。ここは戯曲本では「自分が持っていた十字架を差し出す」となっているんです。それが舞台では直接ジャンヌにかけてやっている。ここで涙腺崩壊が加速

敵方の人間がすごく魅力的なことでこの舞台が単純な勧善懲悪な物語にはならず、戦争の不条理さ、むなしさをより浮き彫りにするものとなっていると感じました。

 

「神はこの世に調和を求められる」

コーション司教のこのセリフにハッとさせられました。今まで「調和」を重んじる価値観のもとにたくさんの「多様性」が切り捨てられてきたんだろうな、悲しいなと。(一方で成熟していない社会で一定の秩序を保つためにこういう価値観が必要だったとも想像しています)

彼は純粋な信仰心を持っているというより、司教という立場を特権と考え神を政治の具にしているように感じられました。村娘に神の声が神の声を聞けたら自分たち聖職者の存在意義がなくなる…。ジャンヌを見くびり自信たっぷりだったコーションがジャンヌのまっすぐな言葉に押され次第に余裕をなくしていく。最終的には姑息な手段を使い「男の服を着た」という矮小な理由でジャンヌを火あぶりに追い込む。滑稽でどす黒くて、宗教とはいったい何なのかと考えさせられました。

 

「晴れ晴れとした顔」

シャルル7世にジャンヌの最期をケヴィンはこう表現しています。最初この言葉にちょっと違和感を感じたんです。私の中では晴れ晴れとした顔って笑顔のイメージだったので。ジャンヌは覚悟を決めた毅然とした表情だったように思った。

でも何度か鑑賞して、晴れ晴れとした顔というのは迷いのない、決意に満ちた表情だったということなんだと…そう考えるとすごくしっくり、腑に落ちました。この時の清原果耶ちゃんの気高いお顔、本当に本当に美しかった。

 

「戦うとは」

そしてラストシーン。ここが戯曲本と決定的に違うんです。ジャンヌの最期を聞いたシャルル7世が今まで言いなりだったトレムイユを呼びつけ決意の言葉を口にする。「まずはブルゴーニュ公と講和する!」と。ここは戯曲本で「兵を出すぞ」となっているんです。そして「剣を抜く」動作が実際の舞台では「こぶしを突き上げる」になっている。これにはしびれましたね。

剣を振りかざすことだけが戦いなのではない、そんなメッセージを感じました。今この時代にこの舞台が上演された意味がここにつまっている!

剣を持つことのない私たちの日常にも闘いはある。自分が揺らぎそうなときには一旦目を閉じて、闘志に満ちた力強いシャルルの表情を思い出して乗り越えていけたら…。勝利王として一歩踏み出さんとする瞬間の小関裕太くんの表情をいつも胸に置いておこうと思います😌

 

この素晴らしい舞台をカンパニーの皆さんで試行錯誤して作り上げてくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にいい舞台だったなー。すべてがすばらしかった!ありがとうございました✨


⭐︎追記⭐︎

ジャンヌ快進撃の報に恍惚とした表情で「ラ・ピュセルよ❤️」とのたまう王太子。あのお顔、となヒミの仁科さん味あったなーと。愛情が暴走しちゃってる感じ。そのあと取り繕うように「なんでもない」って全然ごまかせていませんからー!!!!そりゃジョルジュもクルパンに密偵させるわな。

あと戴冠式前日、ジャンヌが休もうとしたところにヌッと入ってきていきなり手を握ってうっとりその手を眺めるって、だいぶ怖いよ…。ジャンヌ警戒してめっちゃ距離取ってるやん。その流れでドレス渡して喜んでもらえると思ってたんかい!それで拒否されて拗ねて癇癪起こすって幼すぎるぜ…

戴冠式では緊張の面持ちで王冠を戴き王であることを宣言したあと、込み上げる高揚感に口角がゆっくりゆっくり上がっていく様。自分に酔いしれているかのような表情。でもまだこの時は精神的には王にはなれてはいなくて危うさを感じる。

うーん、やっぱり小関くんのこういう心理描写上手いなーと。未熟な王太子シャルル7世が勝利王と呼ばれるようになるまでの道筋を丁寧に丁寧に見せてくれる。この小関くんのお芝居を生で浴びれて、本当に幸せだった✨やっぱり大好きだー!(いつもの結論)