蔵の中。
<どんよりと澱んだようなほこりっぽい空気や、小さな窓から差し込む乏しい光線や、乱雑に積み重ねられた箪笥や長持ちや古つづらや、その他さまざまな調度のかもし出す仄暗い陰は、傷ついた私の体をいたわるようにかき抱いてくれます。>
古いカラクリ人形。
南京玉。
古い絵草紙や錦絵。
その中で黙々と遊ぶ、聾唖の美少女と色白の肺病みの弟。
舞台装置と小道具は揃った!
毎回、不思議な幻想世界に連れ出してくれる横溝作品は、うだるような暑さの浮世を忘れるのにぴったりの本だ。
これが同じ題材でも、江戸川乱歩だとほんの少し、おどろしさと臭みが加わってしまう。
横溝正史と江戸川乱歩。
共に似たような作風で、それぞれに一世を風靡した幻想・怪奇ミステリー作家であるが、私は横溝正史のなにやら黴臭い匂いのねっとりした情念の作品も大好きである。
ギラギラした太陽の照りつけるプールサイドで、きいんと冷えた白ワインを飲みながら読む横溝正史は、これまた最高なのである。(笑)
<物心ついたころより私は、常にこの姉と二人きりで静かにおし黙ったまま蔵の中でお手玉をしたり千代紙を折ったり。。。>
うんうん。いいねえ。
実は、私にも3歳違いの弟がいるんですがね。
(なにやら恐ろしい予感が。。。((((;゚Д゚)))ガクガクガクブルブルブル)
<物心ついたころより私は、常にこのおとおとと二人きりで静かにおし黙ったまま押入れの中で花札をしたりバービーの首を折ったり。。。>
ううむ。私の幼い頃の記憶に似ているじゃあ!
「藏の中」で語られる姉、小雪は老舗の一人娘として生まれたが、耳が聴こえず口が利けないばかりに、蔵の中で育ちました。息を呑むような美貌であったために、両親の不愍さはどんなであったでしょう。
体の不自由さを美貌で補う主人公を描くのは、よくある話で、谷崎潤一郎の「春琴抄」 なども、盲目の主人公、春琴の物語だった。
今では、そういう描き方は、人権団体がウルサイかもしれないが、確かに、美貌+病弱とか、美貌+貧困とか、マイナスのイメージは、昔の日本で持てはやされた。
現在では、美貌+金持ちとか、美貌+頭脳明晰とかじゃなければ、見向きもされないような風潮ですがね^^;。
どちらにしても、美貌がついて廻るのは、つらいわねえ。(号泣)
性悪+病弱+貧困でも美貌ならゆるされるのかっ!?
あああ、また話が脱線。(笑)
横溝正史のこの時期の作品は、どうも谷崎潤一郎や泉鏡花風に、耽美、幻想的、淫靡な世界だと思ったら、案の定、江戸川乱歩に、谷崎潤一郎との類似点を指摘されている。
そもそも横溝正史と江戸川乱歩の幻想的な怪奇の世界という点で、作風は似通っており、横溝は乱歩に似ていると言われるのを嫌っていた。というような話を聞いたことがあるのだが。。。
しかし、耽美幻想と怪奇推理を結びつけたという点で、横溝正史は谷崎潤一郎にはない独自の世界を築きあげており、やはりこの才能とエンターテナーとしての魅力は、ただ者ではない。
江戸川乱歩作品を読めば、乱歩はいいなぁ、と溜息をつき、
横溝正史作品を読めば、横溝はいいなぁと溜息をつく。
どうにかなりませんかねえ、この気の多さと節操のなさ。(笑)
編集後記
「蔵の中」の話は、ミステリとしても特殊な技法で描かれていて、不思議な世界に誘ってくれます。それも読みどころのひとつです。















