会社法に違反し新株の有利発行を行うことが代表取締役(役員)の善管注意義務違反にあたるとして、経営コンサルティング会社が損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.10.16)

 

判決は、善管注意義務違反を否定した。

この判決で注目すべきことは、本件における新株発行が会社法199条3項に違反し役員としての善管注意義務違反にあたるものかである。

 

まず、新株発行により、既存株主が経済的に何らかの直接損害を受けることがあり得るとすれば、それは、払込金額が募集株式を引き受ける者に「特に有利な金額」(会社法199条3項)での発行を行った場合であるところ、

 

「会社法119条3項にいう『特に有利な金額』による新株発行とは、公正な発行価格に比して特に株式引受人に有利な価格をいい、この公正な発行価格は、原則として発行価格決定直前の市場価格が基準となると解される。」とした。

 

本件において、原告は、別件非訴事件において令和3年6月4日時点のリベア・デポの企業価値が(仮装払込を前提とすると)4億5688万5000円であるとされており、

 

これが本件募集株式発行時点(形成29年2月23日)の企業価値と同じであるとして、上記の公正な発行価格は4億5688万5000円/600株であると主張するものと理解される。

 

しかし、リベア・デポの企業価値が、本件募集株式発行時点から4年以上が経過した令和3年6月4日時点においても変化していないことを認める証拠はないから、

 

同時点におけるリベア・デポの企業価値が、本件募集株式発行時点におけるリベア・デポの企業価値と同じであるとして、公正な価格を算定することはできない。

 

その他、上記価格(4億5688万5000円/600株)が本件募集株式発行時における公正な発行価格にあたることを基礎づける事実を認めるに足りる証拠はない。

 

したがって、「上記価格(4億5688万5000円/600株)が、公正な発行価格であることを前提とする原告の有利発行を前提とする損害発生の主張は、いすれも採用することはできない。」として、代表取締役としての善管注意義務違反を否定した。

 

会社役員などの善管注意義務についてはこちらのブログが参考になります。

 

 

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