公共施設への電力供給契約を結んでいた新電力会社「ウエスト電力」の廃業により電気料金の負担が増えたとして、福岡県大牟田市が同社に損害賠償を求めた訴訟の判決が福岡地方裁判所であった。(福岡地裁令和5.5.12)

 

判決は、債務不履行により、4320万円の損害賠償を命じた。

この判決で注目すべきことは、本件が不可抗力により免責されるかである。

 

まず、なお、念のため、本件契約に基づく電力供給義務の不履行が契約及び社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由(不可抗力)によるものであるかどうかについて検討する。

 

この点、被告が不可抗力であると主張する事由のうち、ロシアのウクライナ侵攻(平成26年のクリミア危機が発端であるといえる。)や地震の発生といった事実は、それ自体、被告において統制することが困難であるとしても、

 

それによって生じる電力供給の低下や、電力仕入価格の高騰といった事象については、小売電気事業者である被告において十分想定できるものである。

 

そもそも、被告が小売電気事業から撤退したのは、世界情勢や地震の発生によって物理的に電力が供給できなくなったからではなく、

 

電気料金の上昇によって継続的、安定的な電力供給が困難になったからというものであり、このような直接的な原因である電力仕入価格に上昇自体は、電力仕入価格の変動リスクであって、

 

契約期間が限定されていることからも、本件契約締結時において考慮に入れることのできなかった障害であるとはいえない。

 

また、継続的、安定的な電力供給が困難になるというのは、要するに、小売電気料金の改定などによっても事業として採算が取れないということであって、被告における経営判断に過ぎず、回避困難かつ克服困難な障害であるとはいえない。 

 

したがって、「本件各契約解除による被告の損害賠償義務について、不可抗力による免責は認められない。」とした。

 

当ブログは「にほんブログ村」に参加しております。
よかったらこちらをクリック願います。
にほんブログ村 法務・知財