高級ハンドバックの偽ブランド品を販売することが商標権侵害にあたるとして、フランスのアパレルメーカーが損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.3.9)

 

判決は、商標権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、高級ハンドバックの逸失利益についてである。

 

まず、被告は、被告商品の販売によって合計515万0140円利益を得たことから、同金額が被告の商標権侵害によって原告が受けた損害の額として推定される(商標法38条2項)。

 

もっとも、原告商品は、その販売価格がバーキンにおいては100万円を、ケリーにおいては50万円を超えるものが大半という高級ハンドバックである。

 

商標権は、特許権等の他の工業所有権とは異なり、それ自体に創作的価値があるものではなく、商品または役務の出所である事業者の営業上の信用等が結びつくことによってはじめて一定の価値が生じるという性質を有する。

 

このため、商標権が侵害された場合に、侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客吸引力にのみによって得られたものとは必ずしもいえない場合が多い。

 

本件のようなハンドバックの場合、需要者の購買動機の形成にあたっては、当該商品の属するブランドはもとより、その販売価格も考慮され、

 

また、全体のデザイン及びサイズといった要素も、デザイン性ないしファッション性の側面のみならず機能性からも考慮されると考えられる。

 

これらの点を踏まえると、原告商標ないし原告商品の周知著名性からそのブランド及び全体のデザインが需要者の購買動機形成に及ぼす影響が相当に大きいとみられるものの、

 

販売価格並びにデザイン及びサイズにおける相違が及ぼす影響もなお無視し得ず、上記推定を覆滅すべき事情として考慮するのが相当である。

 

さらに、バーキンの内側には、被告商品1にはないファスナーポケットが設けられていることが認められるところ、

 

その有無は、デザイン性という点では需要者の購買動機の形成に必ずしも寄与しないとしても、収納性という機能面の一要素としては考慮し得るものといえる。

 

以上の事情を総合的に考慮すると、「被告商品の利益の額に対する原告商標の貢献割合については、いずれも8割と認めるのが相当である。」とした。

 

したがって、「本件における上記損害額の推定は2割の限度で覆滅されるから、被告の原告商標権侵害による原告の損害額は、被告商品1及び2の各販売利益の額(276万2740円及び238万7400円)のそれぞれ8割に相当する221万0192円及び190万9920円の合計412万0112円と認められる。」としている。

 

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