葬儀費用などの見積りなどを通じて全国の葬儀社を検索することができるサイト上で登録商標を表示することが商標権侵害にあたるとして、葬儀社がサイト運営者に損害賠償などを求めた訴訟の判決が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和4.9.12)

 

判決は、商標権侵害を否定した。

この判決で注目すべきことは、本件サイトでの登録商標の使用に商標権の効力が及ぶかである。

 

まず、本件サービスサイトは、その構成において、需要者である葬儀希望者に対し、その条件に見合った葬儀社等の情報提供を行い、

 

また希望者には葬儀の依頼や相談、一括見積を行うことなどを通じて、葬儀希望者と葬儀社等とのマッチング支援を行うサービス(被告役務)を提供するものであることが容易に看取できる。

 

そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の情報も表示されることに加え、

 

本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴や所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情からすると、

 

本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として、認識するものであり、

 

原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、被告がその主体であると認識することはないものというべきである。

 

(本件ウェブページを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも同様である。)

 

さらに、原告が問題とする本件ウェブページのhtmlファイル中のタイトルタグ及び記述メタタグに記載された内容は、

 

検索サイトYahoo!において「セレモニートーリン」をキーワードとして検索した際の検索結果において基本的に各タグに記載されたとおり表示されると認めることができるが、

 

その内容は、いずれも本件サービスサイトの名称が明記された見出し及び説明文を相まって、原告の運営するウェブサイトとは異なることが容易に分かるものと評価できる上、

 

一般に、検索サイトの利用者、とりわけ現に葬儀の依頼を検討するような需要者は、検索結果だけを参照するものではなく、検索結果の見出しに貼られたリンクを辿って目的の情報に到達するのが通常であると考えられるところ、

 

需要者がそのように本件ウェブページに遷移した場合には、前記のとおり、被告が運営する本件サービスサイトの一部として本件ウェブページを理解するものであって、

 

やはり、被告標章を本件ウェブページの各タグ内で使用することによって、原告と被告の提供する商品または役務に関して出所の混同が生じることはないというべきである。

 

したがって、「被告による標章の使用は、商標法2条1項6号の規定により、本件商標権の効力は及ばないというべきである。」とした。

 

当ブログは「にほんブログ村」に参加しております。

よかったらこちらをクリック願います。

にほんブログ村 法務・知財